2014年12月14日日曜日

tico moon 「はじまりの鐘」リリースツアー~ファイナルコンサート~

会場のNAOT TOKYOは靴屋さん。ナチュラルで履き心地の良さそうなイスラエル産のレザーシューズを商っています。日の落ちた窓の下には隅田川がなみなみと水を湛えている。

tico moonはアイリッシュハープの吉野友加さんとアコースティックギターの影山俊彦さんのデュオです。7枚目のアルバム『はじまりの鐘』の1年間、全国36会場にわたるリリースツアーの最終日にお邪魔しました。

マイクスタンドに吊り下げられた小さなベルの音に導かれ、スローな3拍子の"predawn"で演奏が始まりました。短い休憩を挟んだ2部構成、アンコールの "Silent Night"まで全16曲。研ぎ澄まされ純度の高いふたりの音楽を堪能しました。

ハープの低音は、ソリッドな高音とは対照的にサスティンが長く柔らかで深みのある響き。ギターの低音弦も意図的にレガートで奏でられ、この2つの音が重なって会場全体を優しく蔽います。そこにかぶさる繊細なパッセージ。

ほぼ全曲がスローナンバーで、テンポを保つのも、空気を弛緩させないのも難しい構成だと思うのですが、まったく飽きることがなかったのは、彼らのアンサンブルにオルタナティブなグルーヴが内包されているからだと思います。

小さな白壁の会場全体をエレガントに響かせて、客席にいるひとりひとりが精巧なオルゴールの部品のひとつにでもなったかのよう。ただ椅子に座って目の前で紡がれる音に身を委ねているだけなのに、まぎれもなく音楽の創造に参加している感覚がありました。美しい体験をありがとうございます。

 

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