2025年12月21日日曜日

アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦

雨上がり、竹橋へ。東京国立近代美術館の企画展『アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦』を鑑賞しました。

企画展の入り口に展示されている田部光子の半平面作品「繁殖する(1)」の質感にまず圧倒される。60号のキャンバスに短く切断された無数の細い竹炭が白い石膏で貼り付けられ、周囲にはアスファルトが塗られている。作品の前に立つと約130cm×97cmのテクスチュアが視界を埋め尽くす。

1950年代後半、特に1956年末から59年にかけて、日本人女性現代美術作家がフランス人美術評論家ミシェル・タピエ(1909-1987)が提唱した「アンフォルメル」の名のもとに注目され、わずか2年で美術史の埒外に追いやられた。美術史学者中嶋泉氏の2020年の著作『アンチ・アクション - 日本戦後絵画と女性画家』に基づくコレクション。

展示室の各所に置かれた14枚のリーフレットが、ムーヴメントのあらましを説明しています。その第12葉より。「そもそもアンフォルメルとは、未だかたちを持たないという意味である。美術史家グリゼルダ・ポロック(1949-)が語るように(中略)、抽象絵画は外界を再現する役割から解放され、素材と空間により見る人との間に出来事を起こす場となったのだ。したがって見る側は、作品に何が描かれているかでなく、作者が画面上で何をどう行ったかに、まずは目を向ける必要がある」。

人は意味の奴隷であるという仮説。何を見聞きしても意味を探し、意味がわからないと不安になる。現代美術の鑑賞者が持つ疑問「この作者は何を言わんとしているのか?」に対してひとつの回答になっていると思います。その結果生まれた作品をどこまで仔細に観るかは、鑑賞者に委ねられる。

芥川紗織(1924-1966)や毛利眞美(1926-2022)はキュビズムから抽象に移行した。赤穴桂子(1924-1998)や田部光子(1933-2024)に共通する「円」を用いたミニマルな表現。山崎つる子(1925-2019)の原色中心のヴィヴィッドな色彩も円のモチーフの変奏と言える。クローム塗装したアクリルやアルミ板の曲面に映る観客をも作品に取り込む多田美波(1924-2014)のクールネス。宮脇愛子(1929-2014)の真鍮作品の冷やかさとあたたかさの同居。草間彌生(1929-)は最初から草間彌生です。

近年亡くなった作家が多いのですが、いずれも60年以上を経てなお色褪せない魅力があります。男性中心の美術論壇によりなきものとされた「旋風」と、それでも個人の審美眼によって蒐集された作品群に、作品本体の価値のみでなく、多くの付加情報によって左右されるアートの在り方を問う側面も感じました。

「アンチ・アクション」という呼称は、アンフォルメルの次にムーヴメントとなった「アクション・ペインティング」の対称として後の時代に付けられたものですが、過去に起った、未来に対するカウンターと捉えると予言を孕み、二重三重に時空が歪む感覚がして面白いです。

 

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