2018年6月2日土曜日

レディ・バード

梅雨入り前の晴天。ユナイテッドシネマ豊洲グレタ・ガーウィグ監督作品『レディ・バード』を観ました。

カリフォルニア州サクラメントは州都とはいえLAやサンフランシスコと比べたらだいぶ郊外。カトリック系私立高校3年生のクリスティン・マクファーソン(シアーシャ・ローナン)は、自身を「レディ・バード(てんとう虫)」と名付け、周囲にもその名で呼ばせている、反抗的でちょっとイタい女子です。

母マリオン(ローリー・メトカーフ)は医療関係、カーステレオでスタインベックの『怒りの葡萄』の朗読テープをかけて母娘で泣く。直後に進学のことで口論となり、高速走行中のドアを開けて道路に飛び降り腕を折るレディ・バード。おバカである。

2002年春から2003年初秋の1年半を断片の集積として構成、十代の自意識のイタさ、ころころとめまぐるしく変わる思春期の心情をシアーシャ・ローナンが好演。その横顔はボッティチェッリの絵画のように美しい。

はじめて好きになったダニー(ルーカス・ヘッジズ)が実はゲイだった。それを知って拒絶するレディ・バードだが、未だにロナルド・レーガンを支持している保守的な家族にカミングアウトできず苦悩している姿を見て友情が芽生えたり、里子であるヒスパニック系の兄ミゲル(ジョーダン・ロドリゲス)が正社員の職に就けたり、リサイクルショップで買ったプロムのドレスをマリオンが素敵に仕立て直したり。初監督の女優グレタ・カーヴィクのマイノリティに対する目線が優しいです。

高校教師たちも皆善人ばかり。病身の神父(スティーヴン・ヘンダーソン)の代役でフットボールのコーチ(アンディ・バックリー)が急遽ミュージカルの指導をすることになり、配役に背番号をつけて、黒板でフォーメーションを指示するシーンには大爆笑。

2001年9月11日のNY同時多発テロに続く、イラク進攻、アルカイダやタリバンとのゲリラ戦など、当時の世界の不穏な空気。カーラジオから流れるアラニス・モリセットの"Hand In My Pocket" に甘酸っぱい気持ちになりました。


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