2018年3月17日土曜日

TRIOLA a Live Strings Performance

聖パトリックの日の夕方、南口商店街は若者たちで賑わっていますが、通りを一本外れた静かな住宅街の入り口にその店はあります。下北沢leteへTRIOLA a Live Strings Performanceを聴きに行きました。

1曲目 "waves horn"、波多野敦子さん(作曲、5弦ヴィオラ)が登場すると手にしたのはヴィオラではなく、leteの木製の床に無造作に置かれた2機のトランシーバー。ホワイトノイズをヴィオラのピックアップに拾わせ、2機を近づけたり遠ざけたりしながらハウリング/共鳴させる。そこに重なる須原杏さんのメランコリックなヴァイオリンの旋律。ネオクラシカルとは一線を画すノイジーなアプローチはTRIOLAならでは。弦楽アンサンブルという形態をとりながら、そのアティテュードはノイズ/アンビエントを基調としたエクスペリメンタル・ミュージック。しかも体温と強靭なグルーヴがある。

三拍子のタンゴ「雨」。波多野さんの主旋律に対して杏さんの不等拍のリフは、メジャー/インディー問わず縦を揃えた音楽に慣れた耳には鮮烈に響く。緻密に作り込まれたスコアとそれをあえて逸脱するアーティキュレーション。音楽の心地良さは、甘美さや明晰さやメカニカルな精巧さとは異なる位相にも存在することを思い出させてくれます。

弓に張られた動物の体毛と樹脂が金属の弦に擦れるときに生じるノイズ。不協和音の美。木製の鳥小屋のようなleteと木製の共鳴胴を持つ二挺の弦楽器によるインスタレーションアートを鑑賞しているような感覚になりました。

波多野さんの「いろんな想いを込めて弾きたいと思います」というMCに導かれ演奏されたアンコールの"coral"。2011年4月に当時神楽坂にあったギャラリーうす沢(オーナーの臼澤裕二氏は津波で甚大な被害を受けた岩手県大槌町出身)でtriolaと共演した東日本大震災復興支援チャリティライブ re:generations(仮)で、この曲に乗せて「都市計画/楽園」をリーディングした僕にとっても特別なナンバー。

波多野敦子さんのソロアルバム "Cells #2" のレコ発が4/18(水)、次のTRIOLA a Live Strings Performanceは5/25(金)。いずれもleteで開催とのこと。楽しみです。



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