2018年3月11日日曜日

絵のない絵本

3.11から7年が経ちました。小田急線で下北沢へ。Workshop Lounge SEED SHIP で開催されたアンデルセン『絵のない絵本』全夜上演会の第二夜に行きました。

ハンス・クリスチャン・アンデルセン(1805-1875)はデンマークの童話作家。代表作は「人魚姫」「赤い靴」「マッチ売りの少女」。民間伝承に着想を得たグリム童話イソップ童話とは異なり、彼の作品はほとんどがオリジナルストーリーです。教訓的でなく、バッドエンドが多い。

絵のない絵本』は孤独な貧しい絵描きに月が毎夜語りかける33篇の物語。童話というよりも大人向けに書かれた短編小説集という趣きです。そのうち第16話「道化師の恋」から33話「五人兄弟」までを朗読と音楽と映像で構成した3時間弱のプログラムです。

ステージ向かって左から、西田夏奈子さん(朗読、ヴァイオリン)、shezooさん(ピアノ)、蔵田みどりさん(朗読、歌)、相川瞳さん(パーカッション)、加藤里志さん(サックス)。

33篇に1曲ずつshezooさんが手掛けたオリジナルスコアと3人(時々4人)の演奏は、全体のトーンとしては控えめですが、物語を際立たせるように時折強く響かせる。

写真には映っていませんが、西川祥子さんの映像は物語の最も印象的な場面を捉えています。古い洋書のページを線香で焼いて描く手法は、一見モノクロームですが、焦げや古紙のくすみがノスタルジックでエキゾチックな物語の表現に重層性を加えています。

複数の訳者による日本語訳のテキストが150年の歳月に濯がれた完成度の高いものとはいえ、観客の集中力を3時間途切れさせない朗読の技術は流石です。地の文と会話と、朗読と台詞と歌唱と、それぞれに異なるプロトコルがあると思うのですが、場面場面もしくは楽器演奏とのトータルバランスあるいは会場の空気を感じ、即興的に使い分けているという印象を持ちました。

「西の空にふたつの月が浮かぶ。ひとつは昼の月、もうひとつは夜の月」。西田夏奈子さんが白、蔵田みどりさんが黒の衣裳で、西田さんがうっすら霞んだ昼の月、蔵田さんが眩しい夜の月、という感じがします。重心が低く端正な響きの西田さんの声と名詞に関西のイントネーションが混じる華やかな蔵田さんの声の対比と重なりも面白かったです。




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