2018年2月3日土曜日

ロマンス談義

寒さの辺縁にかすかに春が兆す節分の夜。下北沢BAR? CCO で開催されたサトーカンナバンド ワン・マン・ショウ『ロマンス談義』に行きました。

昨年6月のレコ発ライブ "THE SPACE WE LIVE BY" 以来、約半年ぶりに聴いたカンナさんの歌声が力強く、深緑色のフローラルプリントのアンティークワンピースを着てステージに立つ姿は自信に満ちており、現在の充実ぶりを窺わせる内容です。

カンナさんは思索の人。対象を定義し、文献をあたり、自己の解釈を提示する。控えめでありながらポジティブに、相対する人たちの生き方を肯定する。二部構成の前後半それぞれで朗読された「ロマンスについて」「ロマンについて」の2篇の自筆エッセイを聴いて、そんな印象を持ちました。

それはいくつかの曲の歌詞にも共通しています。モーリス・メルロー=ポンティジャン=ポール・サルトルミシェル・フーコーという20世紀の偉大な思想家たちに問いかける「ものごと」。「わたしは誰?」ではなく「わたしはどこ」という存在論的疑問は、相対的且つ客観的でありながら自己消失の危うさも同時に表現している。

ラテンのリズムで夏の情景を歌っても、雪国育ちだからでしょうか。北欧的な趣きがあります。カンナさん自身のmicroKORG有澤太郎さんテレキャスター、ウエグチサトシさん(画像左)のベースとエレガットは品良く的確。そして出しどころ引きどころを完璧にわきまえたドラムスUさんのプロフェッショナリズム。SONOR社製小口径ドラムキットのやや軽めのキック音もマレットワークも箱のサイズとカンナさんの音楽にフィットしていました。

キリンジE,W&FBO GAMBOS小沢健二。4人のメンバーそれぞれが選曲して持ち寄ったカバーは逆にユルく、オリジナル曲との緩急の流れを作る。A.C.ジョビンの「イパネマの娘」をカンナさんが訳した日本語詞もロマンティックで美しかったです。

 

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