2016年8月7日日曜日

アサガヤノラの物語

猛暑日。阿佐ヶ谷駅前は提灯がにぎやかに飾られて、サンバにフラに盆踊り。中央線沿線らしいカオスな七夕祭り。それでも線路沿いを5分も歩けば小道は閑静な住宅街に入る。

夏至を過ぎて1ヶ月経ちましたが、まだ充分に明るい午後6時。Barトリアエズでウェルカムかき氷。日曜音楽バー『アサガヤノラの物語』、mayulucaさんの回にお邪魔しました。

自らのレーベルFENETRE RECORDを立ち上げ、2016年1月に3rdアルバム『幸福の花びら』をリリースしたmayulucaさんは、今年一年を『幸福の花びらイヤー』と位置づけ、出演時間の許すかぎりアルバム全曲を歌っている。このアサノラが僕にとっては3度目の『幸福の花びらライブ』です。

「聴こえていたのは風と波とそれくらい/失望はしていたが絶望はしていない」(風と波とそれくらい)。失望はしてい「た」。「た」の一音に閉じ込められた過去の時間。「た」を「る」に置き換えてしまうと全く別の感情になってしまう。そんなミニマルな差異を味わう音楽。「集積」とは、「善良」とは。

声とギターという最小限の音で空間を満たす術を知っており、しかも程好く、品良く響かせることで、聴き手は感覚や思考を音の浪間に自由に泳がせることができる。そしてそれはとても心地良い。彼女の音楽を聴きながら、ジーン・ウェブスターの『あしながおじさん』で大学に進学した主人公ジュディが妄想するレモンゼリーのプールのことを考えていました。

暮色の移ろいのなかで、新譜の9曲と1stから2曲、またしても意外性のあるカバー曲を含め全12曲。1時間きっかりのセットリストが終わる頃、トリアエズの大きなガラス窓の外の街は熱帯夜に変わり、ノラオンナさんの素晴らしい手料理とハイボールをいただきながら、静かに夜は更けていくのです。

 

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