2016年7月9日土曜日

ころがる余白

飯能のギャラリーで詩の個展をするので一緒に朗読をしませんか、というメッセージを森本千佳さんからいただいたのは昨年末。その後、熊本で大きな地震があり、チャリティ公演にしようという話になりました。

森本千佳さんの旧姓は井口さん。元々下北沢の書店フィクショネスの常連で、2000年に詩の教室を始めたときから数年、熱心に通ってくださいました。とても素敵な詩を書かれ、僕が教えることなど何もなかったにも関わらず。

その後、東京から埼玉、そして2年前に熊本県天草に引っ越して、すこし疎遠になっていましたが、この日十数年ぶりに再開しました。真白なカバーオールに濃紫のカーディガン。楚々としていながら時折いたずらな少女のように瞳が光る。長い長い空白が一瞬にして埋まりました。

展示された詩作品はタイポグラフィの要素の濃いヴィジュアルポエトリー。ご主人が手がけたという額装と相俟って、シンプルな造形と大きな余白のバランスがとても詩的です。

詩の教室で持参した自作詩を一篇読んでもらったことは何度もありましたが、千佳さんの朗読をこれだけまとまった数聴くのもはじめてでした。いくつもの小さなガラス片が軽くぶつかりあうような声の響きが心地良く、熟練した朗読ではないのですが、丁寧に生活を掬った作風によく合っていました。

事前に千佳さんからいただいた「距離」というテーマに沿って選んだ40分のセットとアンコールは下記の通りです。

 1. ANOTHER GREEN WORLD
 2. チョコレートにとって基本的なこと
 3. 無重力ラボラトリー
 4. ボイジャー計画
 5. 星月夜
 6. バースデーソング
 7. 無題(青空を飛ぶ鳥と鳥を~)森本千佳
 8. Planetica (惑星儀
 9. 距離
10. 都市計画/楽園
en.

「距離」という詩は2000年に制作したカセットテープ "at St. Alban's Church" に収録し、その後詩集には掲載していない詩で、朗読したのも15年ぶりぐらいです。きっとこの日のために静かに出番を待っていたのでしょう。千佳さんの作品も一篇、詩集『新しい関係』から無題の詩をカバーさせてもらいました。

「今日も誰かの誕生日ならきみの誕生日を毎日にしたい」(森本千佳/バステト)、「今日も見知らぬ誰かの誕生日/惑星は公転軌道上の/去年と同じ場所に戻ってくる」(カワグチタケシ/バースデーソング)。うれしい偶然の符合が随所にあり。

そしてボーナストラック的に、ご来場のMC長老こと村田活彦さんが登場し、マツコ会議でも朗読した詩「オルゴール」を披露して、華を添えてくれました。

会場は西武池袋線飯能駅からほど近く、詩人宮尾節子さんが地元の仲間たちと営むギャラリー食堂「厩戸」さん。実はここが別の名前のお店だった頃、7~8年前でしょうか、一度朗読させていただいたことがあります。キュートな女性スタッフさんたちが提供するお食事もコーヒーも大変美味しかったです。



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