2016年1月3日日曜日

ストレイト・アウタ・コンプトン

ひとりで映画館に行くという行事が正月三賀日の恒例となってまいりました。今年はユナイテッドシネマ豊洲で、F.ゲイリー・グレイ監督『ストレイト・アウタ・コンプトン』を観ました。

舞台は1986年、LAの貧困地域コンプトン。17歳の高校生アイス・キューブオシェイ・ジャクソンJR.)はスクールバスで通学中、大学ノートにラップのリリック(歌詞)を書き貯めている。Dr.ドレーコーリー・ホーキンス)は21歳の子持ちクラブDJ、ギャラは一晩50ドル。イージーEジェイソン・ミッチェル)22歳、クラックのプッシャーとしてLA市警にマークされている。

ある晩クラブの駐車場で弟の喧嘩の仲裁に入ったドレーは警察に見咎められて留置される。保釈金を払ったイージーに「俺の音楽に投資しないか?」と持ちかけた。そこから始まる20世紀最大のギャングスタHIPHOPグループ N.W.A. (Niggaz Wit Attitudes)の栄光と転落、裏切りと和解の物語。

オシェイ・ジャクソンJR.はアイス・キューブの実子であり、またアイス・キューブ本人とDr.ドレー、トミカ・ウッズ・ライト(イージーEの未亡人で管財人)が制作に名を連ねているが、当人たちを美化し過ぎることもなく、且つ事実には忠実に、リアリティある作品になっているのは、当時からストリートのリアリズムを標榜していた姿勢に恥じないものです。

前半は青春サクセスストーリーとしての爽やかさがあり、後半のメンバー間の確執とイージーEの病死間際の和解も情緒に流れることなくテンポ良く見せます。きっちりエンターテインメントに仕上げてくるところはさすがDr.ドレー。というより、歌詞や言動の過激な側面ばかり強調されがちな N.W.A というグループが実はサービス精神旺盛な最上級のパーティバンドであったのだと思います。

悪役にポール・ジアマッティを起用したこともあり、どちらもカリフォルニアの光と影を描いている点で、昨夏観たブライアン・ウィルソンの伝記映画『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』と共通したものを感じました。Dr.ドレーのトラックメイキングに対する偏執狂的な姿勢はブライアン・ウィルソンに通じるのかも。

N.W.A.のメンバーはみんな似ているし、それ以外に2PACスヌープ・ドギー・ドッグなんかもそっくりさんが出てきて(見つけられなかったけどチャックDもいたみたい)、1980~1990年代にヒップホップを体験した世代ならきっと楽しめます。映画館の重低音の効いたサウンドシステムで観ることをお勧めします。
 
 

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