2014年9月21日日曜日

舞妓はレディ

気持ちの良い秋晴れの半日を映画館で浪費する贅沢。ユナイテッドシネマ豊洲周防正行監督作品『舞妓はレディ』を鑑賞しました。

京都の伝統ある花街、下八軒には舞妓がひとりしかおらず、もう29歳。その百春(田畑智子)のブログを見て、舞妓になりたいと訪ねてきた春子(上白石萌音)はOSHKOSHのオーバーオールにゴム長靴姿。幼い頃に両親を亡くし、津軽弁の祖父(高橋長英)と鹿児島弁の祖母(草村礼子)に育てられた方言バイリンガルでした。

一度は断られたが、言語学教授の京野(長谷川博己)が呉服屋の若旦はん(岸部一徳)と彼女の訛りを完璧な京言葉に直して一人前の舞妓に育てられるか賭けをしたことで百春の母(富司純子)の置屋の仕込みさん(見習い)になる。というストーリー。オードリー・ヘップバーンの『マイ・フェア・レディ』を下敷きにしたミュージカル・ファンタジーです。

舞妓の三大必須単語「おおきに」「すんまへん」「おたのもうします」。「あない、そない、こない、どない?」。「京都の雨はたいがい盆地に降るんやろか」。立春に始まり翌年の節分で終わる一年の物語です。

ミュージカルでは、登場人物の感情の昂ぶりによって、台詞から歌に移行するというテンプレートがあり、この映画にも当てはまりますが、それ以外に花街の風習を解説することを歌でやっています。周防監督がこれまでに撮った、僧侶、学生相撲、競技ダンスといった一般的には認知度の低い世界を観客に説明する際に登場人物(主に竹中直人)に喋らせることがともすれば説明的でくどくなりがちだったところを回避しています。これは上手いなあ、と思いました。

主人公の淡い恋も一応描かれていますが、恋愛自体の存在感は極めて薄いです。それよりも女同志のつながりにより、伝統芸を継承していくなかで、それぞれが成長していく。それを見まもる富司純子の目が優しい。主人公の上白石さんは歌とダンスがとっても上手。ミュージカルシーンで俄然輝きが増します。パパイヤ鈴木が振り付けた冒頭とエンディングの群舞は大変愛らしく、華やかで、夢に溢れています。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』や『私の優しくない先輩』なんかにも通じる楽しさ。

現実の京都という町も、僕ら「よそさん」から見たらテーマパークみたいな感じがします。しばらくご無沙汰しているので、そろそろ行ってみようかな。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿