2023年12月3日日曜日

私がやりました

小春日。TOHOシネマズ シャンテにてフランソワ・オゾン監督作品『私がやりました』を鑑賞しました。

中庭の大きなプールが画面一杯に広がる。邸宅から男女の争う声。しばらくして玄関を出る金髪の若い女性。黒髪の高齢女性にぶつかりそうになりながら足早に去る。

駆け出しの弁護士ポーリーヌ(レベッカ・マルデール)は家賃5ヶ月分3000フランを滞納し、立ち退きを迫られている。そこにルームメイトのマドレーヌ(ナディア・テレスキウィッツ)が血相を変えて帰って来る。金髪の新人女優は大物プロデューサー・モンフェラン(ジャン=クリストフ・ブヴェ)に役と引き換えに愛人になることを迫られ、断ってきたという。その日、モンフェランが殺害されたという報せを受け、ポーリーヌとマドレーヌは起死回生の博打を打つ。

モンフェラン殺しで自首したマドレーヌを弁護する法廷で、男性だけの陪審員に正当防衛を主張するポーリーヌの見事な弁舌とマドレーヌの名演技で無罪を勝ち取り、一躍有名になって出演オファーが次々舞い込むがその矢先、往年の大女優オデット(イザベル・ユペール)が二人の新居を訪れ自分は真犯人だと告げる。1935年のパリが舞台ですが、近年の#MeToo運動を踏まえた社会派コメディと言っていいと思います。

被告人と弁護士というバディを組む女性主人公二人以外の登場人物がことごとく頓珍漢な言動を繰り広げる。なかでもマドレーヌの恋人(元彼?)アンドレ(エドゥアール・シュルピス)の見当違いぶりが甚だしく客席は大爆笑に。

愛想の良い美人だが喜怒哀楽が薄く、ポーリーヌが用意した台詞を演じているときだけ感情がこもるマドレーヌの人物造形が面白い。ポーリーヌがマドレーヌに抱く恋愛感情に、異性愛者のマドレーヌは信頼と友情で応える、というのも今日的です。

ココ・シャネル最盛期のパリに相応しいシンプルでエレガントな衣装、ノスタルジックなスウィングジャズ、よく練られた脚本に小粋で軽妙な台詞の応酬。ウディ・アレンみが強い。児童虐待スキャンダルで半引退状態の本家に代わって、映画の楽しさを存分に味あわせてくれます。

 

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