2017年9月3日日曜日

パターソン

秋晴れの日曜日。ヒューマントラストシネマ有楽町ジム・ジャームッシュ監督作品『パターソン』を観ました。

舞台は現代、米東海岸ニュジャージー州の郊外パターソン市。月曜日の朝6時過ぎ、主人公パターソン(アダム・ドライバー)は目を覚ます。隣で眠る美しい妻ラウラ(ゴルシフテ・ファラハニ)の二の腕に口づけベッドを出る。シリアルを食べ、前夜妻が作ったサンドウィッチを提げて、市営バスの車庫に出勤する。

同僚の家族に対する愚痴を聞き、路線バスを定期運航させる。帰宅夕食後に愛犬マーヴィンの散歩がてらいつものバーに立ち寄りビールを1杯飲む。そんな平凡な平日が5日繰り返され、週末の休みを迎える。

出勤の途中で、始発バスの発車前に、休憩時間や退勤の道のり、思いつくままに詩をノートに書き留める。だがその作品はどこにも発表されたことがない。妻だけが高く評価している。

妻ラウラのエキセントリシティがパターソンの日常の平穏さを強調するが、繰り返される日々にひとつとして同じ日はない。バスの乗客が違えば会話の中身も違うし、バーの客の顔ぶれが変われば出来事も変わる。そのメタフォリックな存在として双子の兄弟姉妹が複数登場します。

ジャームッシュ監督ならではのオフビートなユーモアが随所にさりげなく置かれ、爆笑こそないもののクスッとさせられる場面がたくさんあります。そして主人公夫妻が一点の曇りもなくお互いを愛し、信じ、認め合っているのが、ファンタジーと知りつつも幸せな気持ちになります。

大学2年のときに靴下屋でバイトしていた当時のガールフレンドと渋谷のミニシアターで観た『ストレンジャー・ザン・パラダイス』の格好良さとヘタレ感の同居は衝撃的でした。そして『パーマネント・バケーション』『ダウン・バイ・ロー』。あれから30年経って巨匠と呼ばれるようになってもジャームッシュ監督は変わらないなあ、と思いました。

それからウィリアム・カーロス・ウィリアムズアレン・ギンズバーグが同郷でパターソン出身だというのをこの映画で初めて知りました。 



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