梅雨の晴れ間。日比谷TOHOシネマズシャンテで、2013年度カンヌ国際映画祭コンペティション部門審査員特別グランプリ受賞作品『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』を観ました。コーエン兄弟監督映画を劇場で観るのは1996年の『ファーゴ』以来です。
舞台は1961年のニューヨーク。主人公ルーウィン・デイヴィス(オスカー・アイザック)は住所不定のフォークシンガー。マイク&ルーウィンというデュオでメジャーデビューしたものの、相方の飛び降り自殺によって解散。
ひょんなきっかけから猫一匹とギターケースを抱えて放浪が始まり、恋人(?)に妊娠を告げられ、元恋人が秘かに自分の子を産んでいたことを知り、素頓狂なコミックソングのレコーディングを経て、雪のシカゴへ奇妙な長距離ドライヴ。レコードレーベルのオーナーには「金の匂いがしない」と評価してもらえず、ニューヨークに戻りいつものライブカフェで冒頭のシーンにループ。対バンは若きボブ・ディラン。
クールでスタイリッシュな映像ですが、主人公以外の登場人物の行動がどこかしら過剰でズレており、物語の時系列も微妙に乱れ、なんとも言えず不安定な後味なのですが、これらがすべて、ライブ中に飛ばした野次のせいでヤクザ者にフルボッコされたルーウィンが見た一夜のナイトメアだとすれば合点のいく話です。
"Inside Llewyn Davis" はソロデビューアルバムのタイトルですが、彼の脳内で起こったこと(=夢オチ)とのダブルミーニング。まんまとコーエン兄弟の手玉に取られました。お見事。そして、ルーウィンの歌とギターも、T-ボーン・バーネットのサウンドトラックも、音楽はどのシーンでも心地良く素敵です。
『華麗なるギャツビー』で世間知らずのお嬢様デイジーを可憐に演じたキャリー・マリガンがこの映画でもヒロインですが、タートルネックを着たフォーキーなビッチ、ジーン・バーキー役を好演。台詞の約半分は"fuck"と"shit"です。
ジーン「人には2種類いて、上を目指す者と負け犬。あなたはいつも負け犬よ」、ルーウィン「俺が考えるに人は2種類だ。人を2種類に分けたがる奴と…、」、ジーン「負け犬よ!」、で客席爆笑。
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