8月31日13時25分、東京湾に前触れなく飛来し母艦と名付けられた巨大な未確認飛翔体。駐日米軍が新型兵器で攻撃するが東京上空にとどまり続ける。その目的が示されることはなく、時折小型船が地上近くまで降りてきては迎撃される。侵略者と呼ばれる者たちは小さく弱く攻撃の意図を持たないように見える。
「別に不自然なぐらいさせてください。夢ぐらい見たっていいじゃないですか。明日どうなるのかなんて誰にもわからないんだから」。3年後、都立下蛸井戸高校3年3組の眼鏡っ子小山門出(幾田りら)は担任教師渡良瀬(坂泰斗)に片思いしている。
「人類にとっての本当の脅威は侵略者じゃなくて僕だってことを教えてやる」。幼馴染で同級生のおんたんこと中川凰蘭(あの)はツインテールのエキセントリックなハイテンションガール。
得体の知れない脅威が上空を覆っていても、サイゼリヤで放課後をぐだぐだ過ごす日常は続く。それは9.11同時多発テロ、東日本大震災、コロナ禍の空気感の静かに精神を削るあの感じを暗示しているようです。
浦沢直樹の漫勉(Eテレ)浅野いにお回で観たステンレスの灰皿や蚊取線香の缶のデジカメ画像を加工した小型船がそのまま再現されて日常を切り取っている不穏さ。おんたんの兄ひろし(諏訪部順一)の「希望を失わないためにはどうしたらいいと思う? 誰かを守ればいいんだ」と言う台詞がどちらの方向に転ぶのか。作者自身が原作漫画とは異なる結末を書いたという5月公開の後章が楽しみです。