「受験を投げ出したか私立に行く金がない奴が行く学校」茨木県立東海工業高校機械科2年A組の朴秀美(南沙良)は、教室後方のロッカーにもたれて床に座り文庫本を読んでいる。「美しく過度にコミュニケーション能力が高く足も速い」陸上部の矢口美流紅(出口夏希)は秀美の机に乗ってクラスメートたちに囲まれている。
「文化を足蹴にする奴はいつかバチが当たる」。夜は時給953円のボーリング場でアルバイトしている岩隈真子(吉田美月喜)は秀美同様カースト下位。何を読んでいるか真子に聞かれた秀美は、マーガレット・アトウッドの『侍女の物語』の表紙を見せる。
秀美のMCネームはニューロマンサー。モラハラ父に怯える母と引きこもりの弟と在日2世の祖母。自宅に居場所のない彼女は夜ごと駅前ロータリーで開かれる東海村サイファーに出かける。美流紅は授業の旋盤実習で右手小指を失う。美流紅の父親は東海原発の職員だったが数年前に自死し、母時子(安藤裕子)は精神を病んだ。
ひと気のない夜の交差点で3人はひき逃げ事件を目撃する。被害者は夫のDVに耐え兼ね自宅に放火した母親とその赤子。この救いのない村を出るためには金が要る。秀美が地元のトラックメーカーノスフェラトゥ(金子大地)の金庫から盗んだ大麻の種を校舎の屋上のビニールハウスで育てて売るため、前年に不祥事で廃部になった園芸部を3人は再興する。
というような設定からはヘヴィでブルージィでダウナーな映画を連想すると思いますが、意外にも爽やかで痛快な青春活劇に仕上がっているのは、引き締まった脚本とテンポの良い編集とストーリーの中心となる女子高生役の3人の好演の賜物かと思います。
THA BLUE HERB、ジョン・カサヴェテス、岡崎京子。3人のヒロインたちにはヒップホップと映画と漫画というそれぞれの得意分野があるが、敵と対峙する武器としてではなく、お互いを理解し関係性を深めるためのフックとして描かれているのも物語に深みと広がりを与えています。上級生のゲイカップルが全く麗しくないのもいい。
ナレーションも担当する秀美役の南沙良は主役と狂言回しを兼ね、美流紅の家庭環境を伝えるシーンでは、美流紅宅のキッチンで、そこにいないはずの秀美がスクリーンから観客に語りかける。「万事快調」のタイトル通りジャン=リュック・ゴダールへのオマージュか。映画の舞台は現代ですが、多数登場するサブカルアイコンは1990年代に我々世代が夢中になったもの。
原発をバックに荒涼とした砂浜でピクニックをし将来像を共有するシュールなカット。東海村と東海村観光協会が地元ディス満載の本作に特別協力しているのは、自虐なのか、危機感なのかわかりませんが、器の大きさを感じます。
美流紅は秀美と真子をフルネームで呼び捨てする。仲のいい同級生にもフルネーム呼びされる女子陸上部のエースが僕の高校にもいたのを懐かしく思い出しました。







