2021年10月、アフガニスタンの首都カーブル。主人公ラシュミンの自宅で母親のインタビューから映画は始まる。女性たちにはデモをする権利がある。しかし娘のラシュミンとナスタランが危険に晒されるのは心配でならない、とも言う。その隣で落ち着かない様子で母の声を聞くラシュミン。
「私たちはひるまない、決してひるまない」。2021年8月の米軍撤退により政権を奪還したスンニ派イスラム原理主義組織タリバンが、女性に対する教育や就業を禁じたことに抵抗して街頭で声を上げた女性たちを、女性監督がヒジャブに隠したスマートフォンで撮影したドキュメンタリーフィルムです。十数人規模の小さなデモは、自動小銃を持つタリバンの兵士たちに常に監視されている。
「沈黙は強要、合意ではない」「口をつぐんだままだと幸福でいまの暮らしに満足していると思われる」。シュプレヒコールは「仕事! パン! 教育!」。逃げ遅れた仲間の電話が繋がらない。デモに誘った叔母がタリバンの空砲に驚いて転び眉間を切って流血したことでパニックになるラシュミン。タリバンにマークされスーツケースひとつで親類や友人宅を転々として暮らす。
同時公開された『ハワの手習い』と共通する主題を扱いながら、本作の切迫感、緊張感は格別。街路の緊迫感に対して、留学経験のあるラシュミンは、女子校の閉鎖により教育機会を失った妹たちにTOEFL400のテキストで英語を教える家庭内には笑いもあるのが救いです。「あなたが殺されたら赤いスカーフをちょうだい」「やだ、あげない」という自虐的な笑いであっても。
「アフガン女性の最初の敵は父親と兄弟。自分と闘い、家族と闘い、ご近所と闘い、タリバンと闘う」とラシュミンは言う。彼女たちのイスラム原理主義との闘いは、家父長制との闘いでもあります。
この映画に対してというより、この映画が告発する世界の在り方について、ふたつの観点で掘り下げたくなりました。
①タリバンは理屈の通じない獰猛な獣だとラシュミンの母親は評しますが、隠し撮りされたタリバンの兵士たちは組織化されて冷静に見えます。また家庭に帰れば血の通った人間なのでしょう。到底容認し難い思想を持つ人々がどのようなロジックで行動しているのか、そこに葛藤はないのか、逆の立場のドキュメンタリーを観てみたいです。
②家父長制を信奉している層は日本にも根強く存在しています。男性の既得権益を守りたいという欲求はあるにせよ、彼らの大半は女性たちを苦しめたいわけではなく、女性は家庭に収まっているほうが幸福だと信じている側面があるのではないかと思います。その裏側には、学問や仕事は苦行だという感情があるように思えてなりません。







