客電が落ち、バンドメンバーが定位置に着くと、ステージ袖からクワイアが登場する。1曲目は "Hallelujah"。50人超の歌声がパワフルに響き、バンドのグルーヴが後押しする。G.F.ヘンデルのメサイアを1990年代にクインシー・ジョーンズがゴスペルにアレンジしたバージョンです。
江古田ゴスペルクワイアは練馬区豊玉北の聖書キリスト教会東京教会のゴスペルチームです。毎年教会の礼拝堂でクリスマスコンサートを開催し、僕も2023年から聴きに行っていますが、今年はホールコンサートで20周年の節目を飾りました。
メインアクトで、毎月2回土曜日午前にトレーニングを行うmueさんがメンバーになっている江古田ゴスペルクワイアのほかに、キッズHIPHOPダンスチーム BE LIGHT、男声だけの EKOGOS Men's、江古田キッズゴスペルクワイアなど、複数のアクトがステージに上がります。いずれも教会を拠点としており、信者も洗礼を受けていない未信者もいますが、信仰をその基盤に置いており、「歌います」ではなく「賛美します」と言って曲に入る。
Master Of Ceremony のひとり野戸保奈さんが出身地の伊豆大島で2023年に立ち上げた大島ゴスペルクワイアの We Shall Overcome には特に心動かされました。ジョーン・バエズが1969年のWoodstock Festivalで歌ったプロテストソングですが、原曲は黒人霊歌です。EKOGOS The Day&Night の People Get Ready / Love Train は「何も持たず列車に乗ろう。運賃も要らない」とロッド・ステュアートも歌ったR&Bの名曲。イスラエルをいま歌うことに葛藤はないのか、無賃乗車というよりも極楽浄土行きの銀河鉄道みたいだな、と思う。
オーディションで選ばれた各曲のソリストたちの確かな歌唱力。5人の Master Of Ceremony が曲毎に入れ替わりクワイアを束ね、信仰の深さをグルーヴを引き出す力に変える。共感と労い、そして神はいつもあなたの側で見守っている、だから大丈夫、というライブ全体を貫くメッセージ。アフロアメリカンが過酷な現実をサヴァイヴするための機能音楽であり、壮大でハイテンションな布教音楽を浴びると、リベラルなスタンスを持つポップミュージシャンに対する「音楽に政治を持ち込むな」という非難など、小さなことだと思えます。
最後に登場したfrom ワシントンDC、Roderick Giles氏がコール&レスポンスのシンプルな反復で強烈な高揚感を創造する。法悦とは。結局は全部グルーヴに持っていかれる。音楽そのものの持つ強靭さを感じるひとときでした。







