2020年12月27日日曜日

クリスマスの翌々日に

クリスマスの翌々日に、下高井戸のぎゃるりでんぐりさんで、さいとういんこさんとの二人会 Poetry Reading Live "On Second Day After Christmas"クリスマスの翌々日に』に出演しました。

10月末にいんこさんからお誘いがあり「やりたいです!」と即答しました。限定の席数は早々にご予約で埋まったものの、その後感染者数が増え心配もありましたが、無事に当日を迎えられました。ご来場のお客様、でんぐりのオーナー詩子さん、そしていんこさん、ありがとうございます。

入場者の検温と手指消毒、演者の入れ替えと休憩時に換気、ステージ前にはアクリル板、マスク着用のまま朗読しました。
4. Together(さいとういんこ)
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僕のセットリストは以上です。いんこさんとFlying Books店主山路さんの編集で2002年にSplashWordsから出版してもらった『カワグチタケシ詩集』収録の作品を中心に組みました。前半は僕といんこさんが15分ずつのセット、後半は1篇ずつ交互に、最後にこのライブのために共作した連詩「クリスマスの翌々日に」を聴いていただきました。僕にとっては2月の詩詞奮人以来、10ヶ月ぶりの有観客ライブでした。

いんこさんと出会ってからもう20年以上経ちます。たがいにリスペクトしつつスタンドアローンでずっとやってきたこともあり、共作というのがまず異例なこと。一行ずつ詩想を膨らませていく作業はスリリング且つ信頼から来る安心感もあり、とても楽しかったです。

キュートな外見と声質、シンプルで平易な言葉選び、NHKみんなのうたやアイドルにも歌詞提供していることから、ポップならライトヴァースの書き手と認識されることも多いいんこさんですが、本質はRebelの人だと僕は思っています。体制に抗い、欺瞞に抗い、大資本に抗う。一方で、マクドナルドとスターバックスとユニクロが大好き。倫理だけでなく、矛盾を受容することが、ずば抜けた技術を超えて、作品をリアルに面白くしている。僕に同名の作品があることもあり、いんこさんの初期の代表先ともいえる「希望について」をリクエストして朗読してもらいました。

この日のためにおそろいの老眼鏡と星座柄のマスクをいんこさんがご用意してくださいました。特に打ち合わせしていなかったのにふたりともグレーの衣装で、会場の白い壁と調和していたのもうれしかったです。

2020年はこれで仕事納め。新型コロナウィルスの影響で異例づくめの一年でしたが、終わりよければなんとやらです。来年は感染が収束することを願いつつ、どうぞよろしくお願いいたします。

 

2020年12月22日火曜日

私をくいとめて

猫の日。TOHOシネマズ錦糸町オリナス大久明子監督、のん主演映画『私をくいとめて』を鑑賞しました。

2004年に20歳で芥川賞を受賞した綿矢りさが2017年に発表した小説を実写化。主人公黒田みつ子(のん)は31歳のおひとりさま。隣室の住人の深夜のホーミーに悩まされている。日課は先輩OLノゾミさん(臼田あさ美)と共に必要悪と呼ぶ来客へのお茶出し。取引先の歳下営業担当多田(林遣都)に好感を持つが、お気楽な生活を変えるのは気が進まず、一歩を踏み出せない。

みつ子の脳内にはAという名の相談相手(中村倫也)がいて、困ったときや迷ったときに答えを示してくれる。「無機質かと思えば妙にネガティブなときは感情がこもる」。AはAnswerのA。Aの言葉は客観的だが、脳内人格だからみつ子を決して傷つけることなく、背中を押してくれる。

前所属事務所とのトラブルもあり『あまちゃん』以降は作品に恵まれなかった印象のあるのんさんですが、ようやく代表作と呼べる映画に巡り会えたのではないかと思います。こんなに感情表現できるんだという驚きもありながら、舌打ちしてこその彼女だし、ローマに住む親友皐月(橋本愛)を訪ねる潮騒のメモリーズのリユニオン。お互いの姿をデッサンする無言のシーンは鉛筆と雨音だけが聞こえ、歳月を越えて沁み入るものがあります。

脇役では、ヘッドハントされた上司役の片桐はいりもよかったですが、臼田あさ美の存在感が別格。『架空OL日記』でもそうでしたが、スクリーンに映るだけでコメディ色が滲む。ワンカットだけ登場する山田真歩のお芝居も最高です。今をときめく中村倫也をナレーションだけという贅沢な使い方をして、妄想が像を結ぶと前野朋哉の姿と声(しかも水着姿)に変わる演出も気が利いている。

撮影は大久組の中村夏葉。主人公の心情が揺れる前半は不安定な手持ちカメラ、物語が進む中盤以降は固定カメラを主に使用しています。歯科医との不本意なデートを回想する場面では、帰宅した玄関でグッチのハイヒールを脱ぐ所作をじっくりと時間をかけて撮影するのですが、役を美しく撮るということは、表面上のかわいさだけでなく、狡猾さや打算やその果ての落胆まで、すべてを映し出してしまうものなのだな、と思いました。

 

2020年12月18日金曜日

ノラオンナ 冬のムリウイでひとりウクレレ弾き語り

小田急線の高架沿いをてくてく歩いて祖師ヶ谷大蔵まで。Cafe MURIWUIで開催されたノラオンナさんのライブ『冬のムリウイでひとりウクレレ弾き語り』に行きました。

そぎ落とされた言葉、自己表現よりも音楽であることにひたすら奉仕する歌声、最小限に切り詰められたウクレレのつま弾きによって、ぴんと張り詰めたスリリングな空気を作り出すコンセプチュアルなライブパフォーマンスが2018年のアルバム『めばえ』発表以降は顕著でしたが、今日のステージは「わたしなりの忘年会」と言うように、カバーも多く交えて、楽曲に関するエピソードや日常雑感をMCにはさんで、いつになくリラックスムード。

10. 宮尾と私
11. ぼくのお願い
15. Stay home
16. きよしこのよる(讃美歌)

「ポップスが好きなんですけど、自分の持っている声がポップじゃないという葛藤がいつもあります」と言う。当時マッチの歌う「スニーカーぶる~す」を聴いて、どこがブルーズだよ、と批判的だったブルースマニアも、ノラさんのカバーを聴いたらみんな納得せざるを得ないと思います。

コロナ禍の2020年を通じて制作のお手伝いをさせてもらった4枚のホームレコーディングCD-Rの収録楽曲をはじめて生で聴けたのも感慨深かったです。全18曲、90分のなごやかなライブには温かな包容力があり、年の瀬らしい郷愁とすこし感傷的な気分になりました。

2020年12月13日日曜日

ノラバーサンデーモーニングコンサート VOL.22

晩秋から初冬へ。有楽町線、大江戸線、東西線、西武新宿線を乗り継いで。西武柳沢ノラバーにて開催された配信ライブ、ノラバーサンデーモーニングコンサートVOL.22に出演しました。

ノラバーの店主ノラオンナさんとトーストモーニングを食べながらトーク、ソロライブ、コラボ演奏という構成で、7月12日にも出演させていただいたのですが、そのときに通信系のトラブルがあり、前半のトーク部分しか配信されなかったということがあり、申し訳ございませんでした。

それで今回は7月に聴いてもらえなかったライブパートを、ソロ、コラボともに前回同様のプログラムでお届けしました。ソロの演目は長編詩「Wedding Songs」。2018年3月のノラバー日曜生うたコンサートに出演した際に客席で出会ったふたりのお客様が、その後交際に発展し今年7月7日に入籍したことを聞き、大変うれしくまた光栄に思い、この詩を選びました。エンディングがクリスマスなので今の季節にもちょうどよかったと思います。

ノラさんとのコラボ枠は港ハイライトの「やさしさの出口で」(作詞作曲ノラオンナ)の男声パートを朗読で女声パートをノラさん本人の歌で。ビニールカーテン越しではありましたが、間近で聴くノラさんの歌声が美しく、ひたすら聞き惚れていました。

前半のトークパートでは、モーニングを食べながら、これ以上ないくらい他愛のない話をしています。コロナ禍においてはこの他愛のない話が何より貴重に感じられます。モーニングの白いトースト、ゆでたまご、ノラバーブレンド、おまけのプリンのどれもおいしくいただきました。

配信ライブも回を重ねるごとに勘どころがわかってきましたが、今回はお店の構造上斜め横から撮影しており、マイクに向かうのか、カメラに向かうのか、迷いが出ました。アーカイブは24時間、12月14日(月)10:30まで視聴できます。僕も見直して目線のもっていきどころの最適解を見い出したいと思います。ご視聴いただいたみなさん、ノラさん、ありがとうございました。