2012年3月22日木曜日

おとしぶみ ~ Poemusica Vol.3 御来場御礼

ようやく春が兆してきました。曇り空のしたで咲く梅の花が可憐です。Poemusica Vol.3 おかげさまで、にぎやかに終了しました。御来場のお客様、共演者と会場SEED SHIPスタッフのみなさん、ありがとうございました。

ピアノ弾き語りの詩-uta-さんから始まったこの日のステージ。独特の低い歌声は、伸びがあって、よく響きます。ストレートでパワフルな歌声とテンションの高いピアノ。特に左手がブギのリズムを刻むときのグルーヴ感は、最近聴いたなかでは一番でした。

Little Woody Animationの新作はHIPHOPのPV。スポークン・ワーズのリリックと連動して、タイポグラフィーが集まっては分散するという、知的にクールで美しいものでした。

DANさんはアコーディオン弾き語り。アコーディオンという楽器そのものの持つノスタルジックな響きを活かしたインスト曲から始まり、ロマンチックな歌詞を甘い声で奏でます。南米というよりもパリの地下鉄コンコースにいそうな、時に渋く、時に華やかな演奏と歌。ボルサリーノが似合う伊達男でした。

Little Woody Animation の猫語、タコ語にふたたび笑い、最後はノラオンナさんがウクレレを抱いて登場。

グレーのボートネックにジーンズのシンプルなスタイルですが、リハーサルのアディダスからシャープなフォルムのハイヒールに履き替えただけで、一瞬にして会場をしっとりとした雰囲気に包み込む。小さな音で正確に爪弾かれるウクレレと、詩-uta-さんとは180度方向の違う低い歌声。静寂に向き会う音楽。その凛とした佇まいに、聴いているこちらも背筋が伸びます。松田聖子の「赤いスイートピー」からオリジナル曲「こくはく」への流れには鳥肌が立ちました。

僕は先週亡くなった詩人、吉本隆明さんの作品を2篇朗読しました。レクイエムとして「夕の死者」、そして希望を込めて「よりよい世界へ」。それから自作の「コインランドリー」。実はこの作品は1月のPoemusica vol.1でも朗読したのですが、そのときに言い忘れたことがあって。それが何かは、会場に来てくれた方だけの秘密です(笑)!

さて次回のPoemusica Vol.4は、4月19日(木)の開催。えぐさゆうこ&江草啓太まえかわともこ×オカザキエミ(moqmoq)Little Woodyの出演が決定しています。同じテーマのイベントに定期的に出演させていただいて、共演者は毎回替わって、なんとなくわかりかけてきたことがあります。まだ僕のなかでもぼんやりとした感触なのですが、いつか具体的なかたちをもって、こちらでもご報告できたらいいな、と思っています。

リハーサル前に祐天寺(というより蛇崩)のcoffee carawayで開催中の「おとしぶみイシカワアユミ作品展」に寄ってきました。今回の作品は、平面の彩色版画と人形と花と葉、短詩(※画像参照)。カフェの天井から吊り下げられた二色のフェルトで作られた葉。そのいくつかの先端は、透明プラスチックの小さな雫をつけています。イシカワさんの手仕事はいつでも丁寧で好きです。コーヒーもやさしくおいしかった。3月24日(土)までの開催です。


2012年3月17日土曜日

Poemusica Vol.3

3月も後半に入りましたが、なかなか春らしくなりませんね。そのわりに花粉だけは景気良く飛んでいるみたいで、お困りの方も大勢いらっしゃると思います。とはいえ、もうすぐ春分。日が暮れるのはずいぶん遅くなってきたようです。

下北沢のWorkshop Lounge SEED SHIPにて毎月開催されている詩と音楽の総合エンターテインメント"Poemusica"。次回は3/22(木)に。2011年12月29日のパイロット版vol.00から続けて4度目の出演となります。

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Poemusica Vol.3
日時:2012年3月22日(木) Open 19:00 Start 19:30
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
料金:予約2000円、当日2500円(ドリンク代別)
出演:ノラオンナ(ウクレレ弾き語り)   
DAN(アコーディオン弾き語り)       
詩-uta-(ピアノ弾き語り)     
Little Woody(アニメーション)  
カワグチタケシ(ポエトリー) 

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今回の共演者はシンガーソングライター3組と映像作家さんです。楽器はウクレレ、アコーディオン、ピアノとそれぞれ。音楽性もさまざまで、お楽しみいただけると思います。

Little Woody こと植木克巳さんとは2月のvol.2に続いて二度目の共演、確かなインテリジェンスに裏打ちされたキュートでユーモア溢れるアニメーション作品も楽しみです。

下北沢SEED SHIPは、元西麻布Ojas Lounge、渋谷Spumaのオーナー土屋友人氏が昨年3月2日に下北沢にオープンしたスペース。音響と居心地の良さは自信を持ってお奨めできます(※画像はお手洗いの照明)。来月なんと12年ぶりに復活するオープンマイク"everyness"でかつてお世話になったみなさんも是非。

年度末のご多忙な時期とは存じ上げますが、たくさんのご来場をお待ちしています!


2012年3月16日金曜日

microcosmos ⇔ universe

外苑前のギャラリーneutron tokyoで開催中のmicrocosmos ⇔ universe展のオープニング・パーティにお邪魔しました。

来週3月20日(祝)から表参道のスパイラルガーデンで開催される第1回Kawaii+大賞展と連動したこのグループ展には、Kawaii+出展者以外にも、面白い作品がたくさんありました。

1F main gallery の林勇気さんの映像作品。「『しあわせ』というワードをネット検索して出てきた画像を収集して加工しました」という。みなとみらい、東京タワー、気球、クリスマスツリー、シャンデリア、etc。それぞれのオリジナル画像をネットにアップした人たちの気持ちを想像してみたり。

正教徒のイコンとも比較される静謐で深い色彩と筆致を持ついちかわともこさんの作品は3F mini galleryに。30体のマトリョーシカ作品にまず圧倒されますが、小さな平面作品にも穏やかな奥行きがあります。うたたねしているような素朴な表情は、初めてお目にかかった作者ご本人にすこし似ていました。

Kawaii+出展作家、大槻香奈さんの『すっといい』と題された大作。暴力的なまでの饒舌さで、制服の女子高生たちが描かれています。友だちといれば何時間でもしゃべりつづけていられる。それもKawaii+なのでしょう。

対して、双子姉妹作家、三尾あすかさん、あづちさんの作品は寡黙な印象です。大槻さんの戦略性とは対照的に、天然で無防備なKawaii。今回は合作ではなく、それぞれのソロワークが展示されています(スパイラルホールでは合作を展示)。あすかさんの刺繍大作に注ぎ込まれた気の遠くなるような手作業の時間、トレーシングペーパーをメディアにした小品。あづちさんのいままでになく太い描線を用いた平面作品など。新しい表現領域を模索している様子が伺えるのも、ファンとしてはうれしかったです。

『microcosmos ⇔ universe展』は、4月1日(日)まで。展示されているのは京都を中心とする関西の作家たちの作品ですが、そのありようも含めて結果的に2012年の「東京」のKawaiiの多様なパースペクティブのひとつを示しているように思えてなりません。


 

2012年3月14日水曜日

triola presents "Resonant #7"

ひさしぶりにtriolaのライブへ。ブログで確認してみたところ、昨年8月以来でした。

モノトーンの衣装で登場したこの日のふたり。作曲、ヴァイオリンの波多野敦子さんがかぶった黒いベレー帽のてっぺんについているグレーの毛糸ポンポンが演奏するごとに揺れてかわいい。ヴィオラの手島絵里子さんはめずらしくヒールではなく、フラットソールのブーツで。

triola名義としては初めてのアルバムが5月にワンダーグラウンドからリリースされるということで、いままで仮題だった楽曲の正式タイトルが決まり、演奏そのものも収まるべきところにしっくり収まってきた印象です。その一方で、この日はじめて披露されたふたつの新曲のうち、「新曲2」とだけ紹介されたインストゥルメンタル・ナンバーの逸脱ぶりがすごかった。

ワルツで始まった曲に、複数の奇数拍子が転調しながら重なり合って、リフレインのうちに拍節感と調性が薄まり、完全に喪失する混沌の手前ぎりぎりのタイミングで、不意に東欧風の甘く官能的な旋律が浮かび上がるという、作曲家波多野敦子の新機軸であり、真骨頂ともいえる新作。タイミング的に5月のアルバムには収録されないと思いますが、更にその先が見えているのだな、と楽しみです。

長い風邪から回復したばかりで若干かすれ声の波多野さんでしたが、3曲演奏されたヴォーカル・ナンバーでは、その風邪声を逆手に取ったソフトなウィスパーボイスでメロウな一面を聴かせつつ、インスト・ナンバーは逆に攻めの姿勢を前面に出してエッジの効いたハードな選曲。こういったシニカルなユーモアは、優秀なライブパフォーマーに欠かせない要素だと思います。

手島さんの新しいヴィオラも良く響いて全12曲。晩冬のleteの箱鳴りも全部ひっくるめてtriolaの音楽をかたどった幸福な2時間でした。