2012年4月30日月曜日

新・同行二人 A POETRY READING SHOWCASE Ⅲ

徐々に大気の湿度が上がって、来週はもう立夏。新茶の季節になりました。

一昨年春、清澄白河そら庵さんから始まった、村田活彦さんとの朗読二人会『同行二人』。昨年日暮里古書信天翁さんで開催した『続・同行二人』に引き続き、3年目の今年は白山のJAZZ喫茶映画館さん『新・同行二人』と銘打って、賑々しく開催いたします。

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新・同行二人 Shin Dogyo-Ninin A POETRY READING SHOWCASE Ⅲ

2012年5月19日(土)15:30開場 16:00開演
出演:カワグチタケシ、村田活彦+Magical Trampoline(藤井侑大)
料金:1000円(別途1ドリンクオーダー)
会場:JAZZ喫茶映画館 〒112-0001 東京都文京区白山5-33-19
   03-3811-8932 http://www6.ocn.ne.jp/~eigakan/
   ⇒都営地下鉄三田線白山駅A3出口真裏の石段降りて右手

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畏れ多くも芭蕉と曾良にみずからをなぞらえた、オトナ系男子ふたり旅(笑)。大川端は深川芭蕉庵から西に向って出発し、谷中から白山へ。道のりはようやく下町から山手へと入って参りました。

昨年の『続・同行二人』は、震災直後で開催すらあやぶまれましたが、蓋を開けてみれば大盛況。人前に立って言葉を発することができる、そしてその声に耳を傾けてくれる人たちがいる。その喜びと責任とを殊更強く感じたひととき。本当にありがとうございました。

今回の『新・同行二人』。村田活彦さんはメンバーチェンジしたMagical Trampolineをバックに、バカ男子グルーヴ全開で。僕は声だけをたよりに旧作新作取り混ぜての予定。

会場は映画館という名のJAZZ喫茶。お店そのものに刻まれた年輪と真空管アンプの温かい音響が魅力。壁に掛けられたたくさんの振り子時計が全て現役で働いている白山の老舗です。

3年目の旅は初夏の午後に。ご家族連れも、カップルも、おひとりさまも。お散歩のついでにふらりとご来場いただけたら幸いです!

◇村田活彦(ムラタカツヒコ)
隅田川は永代橋のほとりに住んでます。アコーディオンを練習中。
http://blog.goo.ne.jp/inthenameofmyself
http://twitter.com/katsuhikomurata

◇カワグチタケシ(カワグチタケシ)
豊洲運河と東雲運河の交差するあたりに住んでいます。詩集が大好き。
http://kawaguchitakeshi.blogspot.com/
http://twitter.com/rxf13553


2012年4月29日日曜日

ももへの手紙

快晴の昭和の日。 ユナイテッド・シネマ豊洲で、沖浦啓之監督作品『ももへの手紙』を鑑賞しました。

主人公は宮浦もも小学6年生。その名にちなんで、ピンク色のサンダルをいつも履いている痩せぎすでおかっぱの女の子。ピンク色のノースリーブから覗く鎖骨と肩甲骨がチャームポイントです。

父親を事故で亡くし、母いく子(声:優香)とともに、小さなフェリーで瀬戸内海を渡って、母が以前に住んでいた島に引っ越してきます。そこで出会った三人の妖怪。正確には妖怪に姿を借りた専門職能集団「見守り隊」。本来の姿は透明なしずく。死の国へ移動中の死者を代行して家族の無事を見守っている。彼らと過ごした夏の日々。

この映画の一番の魅力は画面の色彩です。登場人物の肌色や服装、三人の妖怪たち、森の精霊、古臭くも愛らしい島の街並み、凪の海。全てが淡いパステルトーンで統一され、尚且ぼやけることなく鮮やか。スクリーンを眺めているだけでやさしい気持ちになれる。唯一強い色で表現されるクライマックスの台風シーンとの対比も自然です。色彩設計の水田信子氏は『となりのトトロ』の色指定を担当したベテラン。品良く丁寧な仕事をしています。

思春期少し手前の奇妙に安定した夏休み。不用意な発言と後悔。ひとりになりたいよりも、ひとりなるのがこわい気持ちがまだ勝っている最後のとき。見えるはずのないものが見えてしまうのかもしれません。

主人公の声を担当しているのは美山加恋(左利き)。NHK朝ドラ『純情きらり』で、主人公桜子(宮崎あおい)の少女時代を演じていた子役がもう15歳。声のお芝居とてもお上手でした。


2012年4月19日木曜日

Poemusica Vol.4

新緑がまぶしい季節になりました。街路樹の銀杏の新芽が好きです。色はまだ薄緑色ですが、指の爪ほどの大きさなのに、ちゃんと銀杏の葉のかたちをしていて、とてもけなげに思えます。

さてと、Poemusica Vol.4 のご報告です。2011年12月のVol.00から、今年は毎月第3木曜日に、下北沢Workshop Lounge SEED SHIPで開催している詩と映像と音楽のイベント"Poemusica"。この日は、ワイルドフラワーで飾られた会場で、4組の出演者が音と言葉を紡ぎました。

えぐさゆうこ&江草啓太。奄美諸島や、いまはもう唄う人が少なくなってしまった屋久島のトラディショナルソングを採集し、ピアノ演奏に乗せて、情感豊かに唄います。ボーカルのゆうこさんは愛媛生まれですが、父方のルーツが屋久島。島唄独特の節回しに、啓太さんのジャジーでダイナミックなピアノが重なると、ブルガリアン・ヴォイスにも似た東欧の響きを帯びるから不思議です。Cocteau TwinsKeith Jarrett のミッシングリンク。たったふたりで音圧が高く、多彩で分厚いアンサンブルを聴かせます。

オカザキエミさん(moqmoq)まえかわともこさん宮武理恵さん。普段は別々に活動している3人ですが、学生時代から10年来のなかよし。SEED SHIPのオーナーが茅ヶ崎でカフェを経営していたときに、砂浜の焚き火で演奏したメンバーなので「たきびバンド」。オカザキさんのコンサーティーナ(手風琴)とカリンバ(親指ピアノ)、まえかわさんのガットギター、宮武さんのフレーム・ドラムとベル、そしてオカザキさんとまえかわさんの声。ひとつひとつは素朴な音色なのに、重なり合った瞬間に奇跡的な輝きを放つ。Vol.2中ムラサトコさんとはまた違った原初の音楽。静謐なのにガーリィ。スイートで緻密。

3人の演奏中に誰かの携帯電話が鳴りました。そのとき、まえかわさんは「遠くでピアニカ弾いてる人がいる」と言いました。僕はこの夜この場所にいられた幸福感を客席で噛みしめていました。

2月からレギュラー出演者に加わったLittle Woodyこと植木克己くんもいまやPoemusicaに欠かせないキャラクターです。ユルくて、自由で、インテリジェントで、ジェントルで、キュート。「10年後に今夜の話をしよう」って。当日披露されたアニメーション作品『タコ兄弟』はYouTubeでも観られます!→http://www.youtube.com/watch?v=TvfnE7Yh9_o

2組のミュージシャンのリハーサルを聴いて僕は、予定していた演目を全部差し替えました。

イントロダクションとして、ウィリアム・サローヤンの小説『人間悲劇』(小島信夫訳)から、主人公の疾走シーン、21世紀の島唄として「離島/地下鉄を歩く」、そして「都市計画/楽園」、まえかわさんが唄う宮沢賢治作詞作曲「星めぐりの歌」に寄せて「無題(薄くれない色の闇のなか~)」。7篇ある「声」のうち昨年書いた一番新しいもの、最後に「バースデーソング」。当日会場に来てくれた誕生日のミュージシャンに。

それぞれ異なる資質と才能を持つ出演者たちをつなぐ縦糸になるのが、スタンドアローンで身軽な僕の役割なのかな。出演5回めにして、遅まきながらその方法をつかみかけてきました。

次回"Poemusica Vol.5" は5月24日(木)開催。小室みつ子さんの出演が決まっています。もちろん、Little Woody と僕も。どうぞお楽しみに!

 

2012年4月7日土曜日

僕達急行 -A列車で行こう-

昨夜は都内でもみぞれが降ったところがあるようですね。すこし冷たい風が戻ってきた4月最初の土曜日。ユナイテッド・シネマ豊洲で、『僕達急行 -A列車で行こう-』を鑑賞しました。

森田芳光監督の遺作となったこの映画。主人公の鉄道ヲタク二人を松山ケンイチ瑛太が演じています。同じヲタクものでも、山田孝之主演の『電車男』(2005)の頃と比べるとだいぶこざっぱりとして。ヲタ自体市民権を得ましたよね。

松ケン演じる小町圭は丸の内の大手不動産会社のぞみ地所に務める営業マン。乗りテツで、車窓を眺めながらジャズを聴くのが好き。会社ではスーツをきちんと着こなして、女子にモテます。小玉健太役の瑛太は蒲田の中小金属加工業の二代目でパーツフェチ。仕事中は作業着ですが、プライベートではチェックのシャツを第一ボタンまで必ずかけている。

この映画の面白いところは、芝居の「間」です。いわゆるナチュラルな演技ではなく、舞台のお芝居とも違う。小津映画や初期の『男はつらいよ』みたいな、映画的としか言いようのない「間」。台詞まわしも「まあ、きれいなお花。ガーベラね」「すこし好きです」みたいな、映画でしか使われないシナリオ文体。東映映画ですが、往年の松竹喜劇映画へのオマージュといってもいいかもしれません。

主人公だけでなく、登場人物全員に列車の名前がつけられています。久大本線豊後森駅機関庫で偶然知り合った鉄道マニアの会社経営者筑後(ピエール瀧)の自宅で瑛太が、HOゲージの修理をするシーン。カメラのパンのタイミングで会話をキャッチボールする。客席にも緊張感と、それゆえの忍び笑いが。松ケンとヒロインあずさ(貫地谷しほり)が初めてデートするバーの場面であずさが眼鏡を掛け替える毎に鳴るバーテンのシェーカー音も同様。

その他随所に笑える効果音が、繊細に丁寧にちりばめられています。

また、筑肥線の黄色い一両編成のワンマンディーゼル車、京急の深い赤色に白いストライプの車体など、本当にチャーミング。走る列車の姿の愛らしさを伝えることにも成功しています。

物語の構造は、森繁久弥の『社長シリーズ』や植木等の『無責任男シリーズ』など、昭和のサラリーマンもの(最近では『釣りバカ日誌』?)を踏襲して、仕事のスキルではなく趣味や縁によって成功していくというもの。悪役が一人も出てこない幸せなストーリーは虚構そのものですが、映画を観る喜びが一杯に詰まっている。こんな楽しいコメディ作品を遺してこの世を去った森田監督に喝采を贈りたいです。

2012年4月1日日曜日

BOOKWORM 4/1 at 千年一日珈琲焙煎所

ぽかぽか陽気のエイプリル・フール。生まれて初めてつくばエクスプレスに乗って。8ヶ月ぶりに開催されたBOOKWORMに参加しました

自分の好きな言葉を会場に集まった人たちとシェアするこのイベントはもう14年続いています。今回の会場はつくばの千年一日珈琲焙煎所。ぬくもりのある白い壁と使い込まれた木の床、天井まである窓からは明るい春の午後の陽光が降り注いで、かつて隔月開催していた頃の原宿Johnbullを思わせます。

夜に下北沢フィクショネスのワークショップがあったため、残念ながら途中までしか会場にいられなかったのですが、主催の山崎円城さん藤田文吾さんに新しく若いスタッフが加わり、よく行きとどいた進行と、参加者みんなの適度な距離感が心地良い空間と時間でした。

僕が聞いた前半はある意味スイカ祭り。ここ数年不義理して彼らのライブには御無沙汰してしまっているのですが、自慢の3MC タカツキATOMtoto 。それぞれのソロパフォーマンスはいずれもハイクオリティで、変わらないものの強さを感じました。

ノラオンナさん銀ノラブログで紹介されているのを見て、この日初めて生で聴いたアサダマオさんが素晴らしかった。ガットギターのカッティングに乗せた尼崎弁のトーキング・ブルース。不敵かつ真っ直ぐな視線。映像的な歌詞。重心の低い語りと鋭角的な歌声の対比。スケート選手と同じ名前ですが別人です。ブログによると今年の6月で一旦音楽活動を休止するということですが、実に勿体ない。

僕は先週のPoemusica Vol.3 に引き続き、吉本隆明の詩を2篇。「死のむかふへ」「よりよい世界へ」を紹介しました。BOOKWORMの場合、他の朗読会とは違って、好きな本や好きな文章の一節を「紹介」するってスタンスで臨んでいます。朗読じゃなくて紹介。

届ける相手がいる。教えたい秘密がある。そんな人たちが集まるBOOKWORMで、いろいろな声を聴くのが好きです。つくば在住の盟友、小森岳史に駅まで車で送ってもらい、まだ陽の残るつくばエクスプレス快速のボックスシートで、その余韻を胸に、上機嫌でうたた寝しました。