遊園地の入口で手渡されたプログラムに折り込まれた短冊状の紙。僕が受け取ったものには「星を[____]」と印刷されている。その空欄に好きな言葉を書いて回収箱に入れます。この時点で観客は言葉を意識し、傍観者から共謀者になる。
電飾を巻き付けた白い衣装で妖精のような出演者たちの中で極彩色のマダム・ボンジュール・ジャンジさんがひときわ艶やか。2000年前後に僕が現代舞踊の故黒沢美香さんのカンパニーの若手ダンサーたちとご一緒させていただいていたときぶりにご挨拶。彼女は希少な女性のドラァグクイーンです。主にゲイの男性が女性性を極限までデコラティブに表現するアートを女性の身体で体現するという、二周三周して説明不能な孤高を極めた心優しき人。
完全に日が落ちて、ピンク色の桜の花びら型イルミネーションでライトアップされた赤い橋の上で西田夏奈子さんが歌う今夜のために書かれた「夜の遊園地」を聾者である Sasa/Marieさんのサインポエトリーと新人Hソケリッサ! メンバーのダンスが支え、上層のテラスから向坂くじらさんが朗読で響きを加える。
3月初旬の夜の野外公演ですが、園内の随所に暖房設備があり、園内を移動しながらの鑑賞は寒さをそれほど感じません。しょうぼうずさんの拍手喝采なつかし大道芸ではジャグリングのキャッチャーに指名していただきました。ネオン管の大階段を背にシルエットを映したソケリッサ! はメンズアイドルばりの恰好良さ。パンダカーにくじらさんと乗ったクマガイユウヤさんのリリカルなギター。
最後は園内に常設されたステージへ導かれ、ジャンジさんが花やしきの歴史を字幕付きで紹介。黒船来航の1853年に江戸町人の観光スポットとして開設された植物園が、明治維新、関東大震災、東京大空襲、東日本大震災、激動を乗り越えた170年間。ジャンジさんの明るく端正な朗読が僕には平和の祈りに聞こえました。
そしてみんなが入口で書いた短冊を3人の詩人、カニエ・ナハさん、ケイコさん、向坂くじらさんがエディットしホワイトボードに貼りつけていく。3~5枚の紙片が1行の短詩となり、その連なりが大きな詩篇となる。3人の詩人の声で再生される言葉たち。自分で書いた言葉は膨大な断片の中からでも自分の耳に届きやすいんだな、という発見もあり。僕の短冊は知らない誰かの言葉と素敵に繋がり「まだ見ぬ夢を叶えて/鳥になって/星を食べる」に。
グランドフィナーレはでんちゅう組の2つのオリジナル曲「夜の遊園地」と「でんちゅう組のテーマ」で聞こえる人も聞こえない人たちもみんなで楽しく賑やかに。あっという間の2時間に、上品で幸福な夢を見たような感触が残りました。
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