2018年11月25日日曜日

ノラバー日曜生うたコンサート

秋の日はつるべ落とし。西武新宿線の改札を出るとすっかり暮れた東の空に十六夜の明るい月。出がけに手間取ったせいで開場時間をすこし過ぎて黒いドアを引くと既にお客様がふたり。店主ノラオンナさんと談笑していました。

11月25日いいふたごの日、西武柳沢ノラバーにて開催された『日曜生うたコンサートカワグチタケシ2018年秋の朗読ワンマンライブのご報告です。


 1. 無題(世界は二頭の象が)
 2. 名前
 3. ケース/ミックスベリー
 4. 無題(薄くれない色の闇のなか~)
 5. ホームカミング
 6. 虹のプラットフォーム
 7. バースデー・ソング
 8. Planetica (惑星儀)
 9. もしも僕が白鳥だったなら
10. 線描画のような街
11. 観覧車
12. 水玉
13. 花柄
14. fall into winter
15. (タイトル)
16. Happy Xmas (War Is Over) カワグチタケシ訳

以上16篇を朗読しました。前回僕がノラバーに出演した3月4日(日)にこのお店ではじめて出会い、その後いくつかの偶然と必然を重ねて交際に発展した素敵な大人のカップルがお揃いでいらっしゃるとのご予約を受けて、恋愛要素多め(僕にしては)のセットリストを組みました。

とはいえ僕の作風からいってハッピー全開とはいかず、若干の申し訳なさも感じつつ、それはそれ。後日うれしい感想メッセージをいただきました。どうもありがとうございます。

今回のご来場特典がクリスマスソング訳詞集 "sugar, honey, peach +love Xmas mix" ということで、現時点で唯一のオリジナルクリスマスナンバーである「(タイトル)」と訳詩集からジョン&ヨーコの "Happy Xmas (War Is Over)" を。終演後には差し入れの梨スパークリングワインを開けて、訳出した歌のオリジナルバージョンをみんなで聴いて、一足早い歳末気分を満喫しました。

この日は、ジュテーム北村氏出演のJazzpoetopiaTOKYO LANGUAGE SLAMの第1回、文学フリマなど東京近郊でいくつか言葉のイベントが重なりました。選択肢が増えるのは本当に素晴らしいことだと思います。

その影響もあってか、今夜のノラバーのお客様には同業者がおらず、ミュージシャン、舞台役者、映像のハードウェア技術者が席を並べました。リラックスしたアットホームな空気で僕自身も楽しめました。

終演後のお楽しみ、ノラさんの手料理はどれも一工夫あって丁寧で、リクエストしたクリームシチューはお肉ほろほろで野菜の歯ごたえも絶妙。大人の恋バナに花咲かせながらみんなで美味しくいただきました。

 

2018年11月11日日曜日

ボヘミアン・ラプソディ

11月にしては気温の高い晴れた日曜日の午後、海沿いの映画館へ。ユナイテッドシネマ豊洲で、ブライアン・シンガー監督作品『ボヘミアン・ラプソディ』を観ました。

まずタイトルバックの20世紀FOXのジングルがいつもの管弦楽ではなく、ブライアン・メイグウィリム・リー)の音色そのもののギター・オーケストレーションで高まる。そのテンションが停滞することなく、あっというまの2時間15分です。

1970年のバンド結成前夜から1985年のライブエイド出演まで。クイーンというより、故フレディ・マーキュリーラミ・マレック)というエキセントリックなスーパースターの半生を描いた事実に基づくフィクション。

いろいろな楽しみ方のできる作品ですが、1976年の5thアルバム『華麗なるレース』からリアルタイムで聴き始めた僕にとっては、1st『戦慄の王女』(なんで女王じゃないんだろう?)のプリペアド・ピアノや人力レスリースピーカーなど、奇天烈なアイデアが溢れて止まらないレコーディング風景や「ラヴ・オブ・マイ・ライフ」「ウィ・ウィル・ロック・ユー」「地獄に道連れ」などの名曲誕生の瞬間が再現されているのがうれしかった。クイーンで一番好きな曲ジョン・ディーコンジョセフ・マゼロ)作の「マイ・ベスト・フレンド」がメンバーからも微妙にディスられていたのも面白かったです。

ウェインズ・ワールド』(1992)には、カーステレオから爆音で「ボヘミアン・ラプソディ」を流し、ギターリフのところで全力ヘドバンする名場面がありますが、主役のマイク・マイヤーズがこの映画ではレコード会社の重役を演じ「車でヘドバンできない曲がヒットするわけがない」と一蹴するシーンは洒落が利いています。

グランドピアノにペプシの紙コップが大量に乗っているよく見るアー写はライブエイドなんですね。フレディひとりでこんなに飲むのかよ、と思っていたのも、前のアクトの飲み残しか、と謎が解けました。『クイーン・ロック・モントリオール1981』の夥しいハイネケンの壜はフェスではないので、ひとりで呑んだものでしょう。

東映のヤクザ映画を観た直後に歩き方がオラオラになるみたいに、映画館を出た男子たちが心なしかフレディのように胸を張っているように思えて、なんとも愛おしく平和な気持ちになりました。