2021年7月13日火曜日

ジャニス・ジョプリン

火曜日。シネ・リーブル池袋でデヴィッド・ホーン監督作品『ジャニス・ジョプリン』を鑑賞しました。

松竹ブロードウェイシネマと銘打たれているとおり、2013年からマンハッタン西45丁目の Lyceum Theatre で興行されたミュージカル・ショー"A Night with Janis Joplin" を劇場公開用にフィルムに収めた映画です。

1943年テキサス州の湖畔の町ポートアーサーに生まれたジャニス・リン・ジョプリンメアリー・ブリジット・デイヴィス)。父親は石油会社の社員、専業主婦の母、弟と妹の5人家族、白人の中産階級出身。テキサス大学を中退後、サンフランシスコのヒッピーコミューンでシンガーとして名声を高めた。27年の生涯で発表したアルバムは4枚。デビューからわずか3年余の活動期間だったが、ロック史には欠かせないレジェンドのひとりだ。

ジャニス役を演じるメアリー・ブリジット・デイビスが、8人編成の生バンドをバックに、圧倒的な歌唱力で名曲群を歌い上げ、その合間にライフストーリーを語るモノローグが挿入される。金属的な倍音と包み込むような温かみという相反する要素が共存するジャニスの歌声をよく再現しています。ジャニスが影響を受けたゴスペルやソウルシンガーたちを4人の黒人女性俳優(Aurianna AngeliqueAshley Tamar DavisTawny DolleyJennifer Leigh Warren)が演じ分けていますが、彼女たちにはほぼ科白がありません。

"Summertime"、"Piece Of My Heart"、"Ball And Chain" など代表曲のいくつかは、ソウルシンガー役の正統的な歌唱の直後にジャニスの解釈で歌い直されることにより、後にLed Zeppelinロバート・プラントや更にその影響を受けたGreta Van Fleetジョシュ・キスカによって現代まで受け継がれる、ブルースを基調としながら、極度の緩急でHIPHOP的と言えるほど歌詞を詰め込むジャニスの特異なスタイルが浮き彫りになります。

ゼルダになってスコット・フィッツジェラルドに出会いたい。ずっとビートニクになりたかった、ビートニクになって人生を楽しみたかった。と語るジャニスの文学少女的な側面にも言及されるのが興味深い。

ジャニスのオーヴァードーズによる死は舞台上では直接的に描かれませんが、主役不在のステージで、ベッシー・スミスオデッタニナ・シモンエタ・ジェイムズアレサ・フランクリン、過去の歌姫たちの亡霊が集合し、ボブ・ディランの "I Shall Be Released" を歌うシーンは泣かせます。

ロッククリシェともいえる「自由とは失うものがないということ」は "Me And Bobby McGee"、「窓辺に座って雨を見ていた」は "Ball And Chain" の歌詞なんですね。映画になると字幕が付くからそういうのも分かっていいな、と思いました。
 

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