夏日。吉祥寺STAR PINE'S CAFEで開催された『ノラオンナ57ミーティング「ひとりとは」』に行きました。
開演予定時刻を数分過ぎてステージと客席の照明が落ちる。舞台上のスツールに腰かけた白い肩を淡い灯りが照らし、ノラオンナさんが真っ暗な観客席に向かって語りかける。そしてスキャット。2曲目は「君とデート」、「詩集君へ」の朗読から「梨愛」へ。
4月21日はノラオンナさんのデビュー記念日。この日に開催されるライブは毎年趣向を凝らしショーアップされたもので、フルバンド、弦楽三重奏など編成も色とりどり。今年はサブタイトル「ひとりとは」の通り、彼女の原点ともいえるひとりウクレレ弾き語り(ときどきアカペラ)です。
ノラさんの音楽に初めて触れてから十数年が経ちます。当時弾いていたのはソプラノウクレレ。その歌声が風だとしたら、小さく爪弾かれるウクレレの弦の音は花びらのようでした。テナーを経て現在はバリトンウクレレを演奏することが多くなり、花びらは枝に、幹に。「少しおとなになりなさい」を聴きながら、奏法やタイム感の変化に積み重ねた時間を感じます。
デビュー盤の1曲目に収められている「流れ星」は1オクターブ上げて歌われ、「めばえ」の澄み切ったファルセットにつながる。「パンをひとつ」「ないものみえないもの」「風の街」「やさしさの出口で」「都電電車」「やさしいひと」と次々に紡がれるGood Melodies。甘くノスタルジックで包容力があり、すこし残酷。コンサートというよりも一人芝居、一幕の音楽劇を鑑賞したような充実感が残りました。
アンコールでは、現在準備中という新譜の共同制作者外園健彦さんが加わって、ノラさんのスキャットにガットギターで芳醇で艶やかな和声を添え、ウクレレのミニマリズムから離れた大きな展開の音楽が会場を包み込みます。次回作と来年4月21日の20周年公演がますます楽しみになりました。
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