2026年7月13日月曜日

ヌーヴェルヴァーグ

真夏日。ヒューマントラストシネマ渋谷にてリチャード・リンクレイター監督作品『ヌーヴェルヴァーグ』を観ました。


エリック・ロメールコーム・ティユラン)、ジャック・リヴェットジョナス・マルミー)がタイプライターを叩くカイエ編集部で、ゴダールはデスクの引き出しの金庫から紙幣をくすね、トリュフォーの『大人は判ってくれない』が出品されているカンヌ映画祭へ行く。

1959年のパリ。ヌーヴェルヴァーグの創成期を舞台に、ジャン=リュック・ゴダールが監督第一作『勝手にしやがれ』を製作する過程を追った、史実に基づくフィクションは、『勝手にしやがれ』と同じ白黒1:1.37の画角で撮影され、フィルム上のノイズやキューマークまで再現されています。

「最高の批評方法は自分で映画を撮ること」。戦場カメラマンのラウル・クタールマチュー・パンシナ)を雇うが、これが当たる。戦闘中の動体を追っていたクタールは、街中でのゲリラ撮影にうってつけ。手持ちカメラはリール音が大きくて同録ができないが、それを逆手に取り、カメラの背後で思いついたセリフやアクションをリアルタイムで役者に大声で伝え、演じさせるゴダールの即興演出が生まれる。

[未熟な詩人は模倣し、成熟した詩人は盗む(T.S.エリオット)]。上映開始から40分は、資金集めやキャスティングなど、ドタバタな準備を描く。クランクイン後は「○日目」とテロップが入り、撮影の20日間を日別に描くのは、リンクレイター監督らしい表現です。

天才の型破りで予測不能なわがままに振り回される、という見方もできますが、ゴダールも役者たちも裏方もみな一様に無邪気で前向きで楽しそうな印象が強く残りました。決められた手順に沿って清々と撮影を進めるより「今日はアイデアが尽きた」と突如打ち切るのは、はた迷惑ではありますが誠実な態度にも思われます。

当時を演じる役者陣の衣装、ヘアメイク、細かな動きや画角、パリの街並み、自動車、インテリア、小道具などの再現度が偏執狂的で、その意味ではゴダールの即興性とは対極の細部まで緻密に設計され作り込まれた作品です。アメリカ人女優のジーン・セバーグゾーイ・ドゥイッチ)の夫との会話以外の台詞はすべてフランス語で、トリュフォーもロメールもリヴェットも、いかにも言いそうなことを言うのが楽しい。ジャン=ポール・ベルモンドを演じたオーブリー・デュランの顔真似はちょっとやり過ぎなぐらいですが、だんだん笑えてきました。

 

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