ノラさんの現時点における最新盤『スサー』を共にレコーディングした二人のギタリスト、外園健彦さんと古川麦さんとのトリオ「夏のスサー」。2012年結成、メンバーチェンジを経て現在は、ピアノ藤原マヒトさん、ドラムス柿澤龍介さん、ベース宮坂洋生さん、ボーカルノラさんの4人編成バンド「港ハイライト」。2組のユニットがいずれもノラオンナ楽曲を交互に演奏する(したがってノラさんは出ずっぱり)という構成です。
先攻は黒衣装の港ハイライトで「港ハイライトブルーズ」。宮坂洋生さんのウッドべースが加わったアコースティックカルテットはジャズテイスト。藤原マヒトさんは終始オブリガートを弾き、そのありようは楽器こそ違えキース・ムーンのごとし。柿澤龍介さんが正確なブラッシュワークと強力なキックで底支えする。
続いて白衣装の夏のスサーで「Bye-bye」。名盤『スサー』の1曲目です。古川麦さんと外園健彦さん、2本のガットギターは、どちらがリードでどちらがリズムという役割ではなく、有機的なアンサンブルとして機能しており、港ハイライトが意識的に隙間を作るのに対して、夏のスサーは寄木細工のように美しく組み上げていく。
2組の演奏の土台となっているのがノラさんのがっしりとしたソングライティングであり、熟達した演奏に乗って自由に遊んでいるのがノラさんの歌です。
古川麦さんの弾き語りを初めて聴いたのは13年前のこと。ガットギターのフィンガーピッキングの清涼な音色、滑らかで豊かな歌声、誠実でアイデア溢れる演奏から滴るフレッシュネスがまったく色褪せていないことに驚かされます。
「港ハイライトブルーズ」「無理を承知で言ってるの」「愛の劇場」「抱かれたい女」「バニラの香り」など、あえて世俗の道、大衆音楽(=ポピュラーミュージック)を選ぶ港ハイライト、「Bye-bye」「クリスマスプレゼント」「拳」「My bluebird」など、聖性を帯びた夏のスサーの楽曲と演奏を、客席という汽水域で交互に浴びて感情が揺さぶられる。
終盤になると両者は徐々に融合し、聖俗あわせ持つノラオンナミュージックに収斂していく。更に、アンコールで披露された「梨ちゃんソング」は、テクノアレンジのシングル盤とは180度異なる解釈で、6台の生楽器のオーガニックなグルーヴはTALKING HEADSの "Remain In Light" を思わせるオルタナティブな響きを持つものでした。

