2024年1月12日金曜日

カラオケ行こ!

快晴。TOHOシネマズ日本橋山下敦弘監督作品『カラオケ行こ!』を観ました。

本降りの雨に濡れて肌に貼りついたシャツに背中の刺青が透けて映る。成田狂児(綾野剛)は大阪の裏通り南銀座に事務所を置く四代目祭林組若頭補佐。

中学三年生の岡聡実(齋藤潤)は合唱部部長。大阪府大会3位で全国大会を逃した。ももちゃん先生(芳根京子)が楽屋に忘れたトロフィーを取りに帰ったコンサートホールの大階段で「カラオケ行こ!」と成田に迫られる。組長(北村一輝)の誕生日に毎年開かれる組のカラオケ大会で最下位になると過酷な罰ゲームが待っている。合唱コンクールで一番上手かった学校の部長に教われば間違いない、と言われる。

成田狂児の十八番はX JAPANの「」。初めは狂児を恐れ、蔑む聡実だったが「裏声が気持ち悪いです」と一刀両断。いくつかのエピソードを経て心を通わせていく二人。後輩和田(後聖人)のジェラシー、彼らを見守る副部長の中川(八木美樹)の包容力。僕はプラトニックなBLコメディとして鑑賞しました。

成田はじめ組員たちが心優しく、ひとりだけヤバいのがいるのですが既に破門されている。聡実と成田それぞれ両親との関係性、漫画原作にはない映画を観る部、サイドストーリーもしっかりメインテーマと絡まり、無駄なシーンがない。野木亜紀子の最近作と比べて社会課題色は薄いですが、上記の意味で見事な脚本です。コンクールのためにがんばってきたのに変声期でボーイソプラノが上手く歌えない聡実には、基礎も何もないが必死に歌う狂児がまぶしく見えたのしょう。顧問役で芳根ちゃんの起用とエンドロールのリトグリは、両者の出世作である2015年のTBSドラマ『表参道高校合唱部』へのオマージュか。

聡実の母親(坂井真紀)が、夕飯時に自分の鮭の塩焼きの皮を剥がして、父親(宮崎吐夢)の茶碗に盛られた白飯の上に乗せるだけの衝撃のスローモーション。他家には理解できないその家族だけのルールってあるよね、って思いました。

リンダ リンダ リンダ』『天然コケッコー』『マイ・バック・ページ』『味園ユニバース』『オーバー・フェンス』『ぼくのおじさん』と、山下作品はそれなりに観ているほうだと思いますが、今作はかなり上位に入ります。

 

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