地方大学の工学部の学生ヨンソク(ナム・ジュヒョク)は坂道で車椅子から投げ出され倒れているジョゼ(ハン・ジミン)を助け、5千ウォン払ってリアカーを借り、壊れて動かない電動車椅子とジョゼを町外れの家に送り届ける。
生まれつき足が不自由で歩けないジョゼは廃品を拾って生計を立てている老婆(ホ・ジン)とふたり暮らし。アイロンをひっくり返したホットプレートでスパムを焼きヨンソクにふるまう。
田辺聖子の短編小説を犬童一心監督が渡辺あや脚本で当時22歳の池脇千鶴と23歳の妻夫木聡を撮った2003年の実写版はゼロ年代の恋愛映画の金字塔。2020年のタムラコータロー監督、清原果耶、中川大志の劇場版アニメに続きリメイクされた今作は韓国映画らしい綺麗なメロドラマに仕上がっています。
ハン・ジミンのジョゼは、池脇千鶴のように傍若無人でもなく、清原果耶のように身勝手でもなく、無口で他人を寄せ付けない。ラフマニノフの緩徐楽章のようにロマンチックで感傷的なNARAE(ナレ)のスコアが全編に流れ、俯瞰ショットとスローモーションを効果的に取り入れた秋、冬、春の背景は潤いがある。静かな映画ですが、主人公ふたりの姿が美しく、それだけで画面がもちます。
2003年版では車、2020年アニメ版では電車での移動がストーリー上の重要なファクターになっているが、本作において移動はiPhoneディスプレイ上のGoogleストリートビューに置き換えられており、タイトルの「魚」が象徴する閉塞感を表現しつつ、サイバースペース内とはいえふたりをスコットランドまで連れて行く。調理音や咀嚼音、枯れ葉がアスファルトに落ちる音、雪を踏む靴音、これら生活音を丁寧に掬いとって、映画の静謐さを更に強調しています。
それにつけても、工学部の学生が常時チェックのネルシャツを着用するのは日韓共通なんですね。長身で小顔のナム・ジュヒョクが着るとネルシャツの最高峰という感じがしました。
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