2021年11月14日日曜日

We can fly

秋晴れ。三鷹SCOOLにて、舘そらみ脚本・演出 ガレキの太鼓We can Fly』を観劇しました。

「みなさんようこそ来てくださいました。小学校の同級生とはそんなに連絡取ってない。誰かに相談してても気づけば相手の相談を聞いてているタイプの人たちです」。

“見よう見真似のミュージカル” の登場人物は7人。婚活中の不動産業OL(稲葉佳那子)、正義感が強く怒りっぽい青年(貴瀬雄二)、人に譲ってばかりの女(西田夏奈子)、ダメンズの彼女(日高ボブ美)、気の弱いシネフィル(ホリユウキ)、酒を愛するボクサー(奥田努)、絵描きの卵(水口早香)。

ドラマチックな展開もストーリーらしいストーリーもない。くるぶしソックスがすぐ脱げる。狭い舗道ですれ違うとき車道に出て譲ってしまう。コンビニの一番くじを店員が開けるのが許せない。彼氏がくれた誕生日プレゼントがロッテのチョコパイ。そんな日常のもやもやを時に朗々と時に切々と歌う。

ミュージカルというと感情の高まりを歌い上げるアリアやスペクタクルな群舞を思い浮かべると思いますが、これは逆転の発想。そして、普通の人たちの当人ですらしょうもないと思っている心情が歌に乗せられることによってにわかにドラマ性を帯びるという二重の逆転。どこにでもいそうな7人おのおのが愛おしい謎の感情が生まれる。

20人規模の小さな会場は満席で、コロナ後初の劇場観劇でしたが、やはり目の前で生身の人間が悩んだり困ったりしながら一所懸命に動く姿を見るのはそれだけで感動的だなと思います。

みなさんミュージカル未経験者とのことですが達者です。貴瀬雄二さん(特撮Boyz)は外見だけでなく歌声もイケメン。稲葉佳那子さん(こちらスーパーうさぎ帝国)はまっすぐな熱演でしたが、実は「以後お見知りおきを~♪」の合唱時のステップが超絶可愛かったです。

ご縁があって何度か共演したことのある西田夏奈子さんは、いままでどちらかというと強めな性格の役柄を見る機会が多かったのですが、今作では気弱な役を普段よりかなり声量控えめ、歌唱力も封印気味に演じており、自己表現よりも作品に奉仕するその引きの芸に痺れました。

強くなりたいだけ、悩みはないというボクサー奥田努さん(Jr.5)の「悩みとかある人はすごいな、そういう生き方って恰好良いなと思います」という言葉にこの舞台のメッセージが集約されていると思います。フィナーレの「しょうもない私であることを受け入れて始めませんか?」に大変前向きな気持ちにしてもらいました。

 

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