1971年、ワシントンD.C. ダレス国際空港の税関で24歳のデイヴィッド・ボウイ(ジョニー・フリン)は足止めをくらっていた。3rdアルバム『世界を売った男』のプロモーションのための全米ツアーに招かれたはずが、興業ビザは用意されておらず、女装のボウイに審査官の疑念の目が向けられた。
数時間後、ようやく入国審査をパスしたボウイをマーキュリーレコードのA&Rマンであるロン・オバーマン(マーク・マロン)がピックアップするが、ライブのブッキングはおろかホテルの予約すらされておらず、宿泊先はオバーマンの実家。新譜は音楽ジャーナリストに「悲惨、陰鬱、不可解」と烙印が押され、オバーマン以外のマーキュリーレコ―ドの社員からも不評だった。
デイヴィッド・ボウイが1972年に発表したロック史上の名盤『ジギー・スターダスト』でブレイクする以前の下積み時代を描いた映画ではありますが、ボウイの遺族側から楽曲の使用許可が下りなかったことで、実在のミュージシャンを主人公にした映画としては変わり種となったと言ってていいと思います。その条件で、どうモチベーションを保って制作したのか、監督のインタビューをいくつか読んでみたところ、グレーテストヒッツMV的な束縛から解放されてボウイの内面を掘り下げることができた、ということではありましたが。。
兄弟で観に行ったライブ会場で突然倒れ、統合失調症で入院する兄テリー(デレク・モラン)。精神疾患を持つ親族が他にも複数おり、いつか自分も精神に異常をきたしてしまうのではないかという強迫観念を持つボウイ。兄の見舞いで見た役を演じることによって障がいの苦痛を軽減するセラピーから生まれた別人格ジギー・スターダスト。という流れは確かに理解できました。
自身ミュージシャンでもあるジョニー・フリンがコンタクトレンズでオッドアイを再現しボウイ役を好演しています。オリジナル作品をいくつか聴いてみましたが、声質と発声がボウイに似ていると思いました。One believer can change the world. という自らの言葉を現実にしたオバーマンとのバディもののロード・ムービーとしては悪くないです。
笑えるところもあります。
②ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのライブでテンションの上がったボウイが打ち上げで暑苦しく歌詞を讃えた相手がルー・リードではなく後任のダグ・ユールだった(オバーマンはその場で気づいていたが面白がって後で教えた)。
③ジギー・スターダストの初回公演の本番前、アンジー(ジェナ・マローン)が用意したサテンやスパンコールの衣装を本気で嫌がるザ・スパイダース・フロム・マーズのメンバーたち。特にミック・ロンソン(アーロン・プール)の拒絶っぷりがひどい。
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