2016年、大韓民国。一面が鏡の白いスタジオでイヤホンから流れる音楽に合わせて一人で踊るスニーカーの底がフロアを擦り叩く音と荒い息遣いだけが画面から聴こえてくる。最後のターンで足がもつれ、繰り返し転んでは立ち上がる。
前半90分は高校生ソヒが主役。多数の事実を丁寧に描写し、追い詰められていく姿にリリアリティを与える。後半50分の主人公は刑事ユジン。ペ・ドゥナの笑わない芝居。ルイ・ヴィトン、セリーヌなどハイメゾンのモデルにたびたび起用される美貌を封印し、母親の介護休暇明けのくたびれた中堅刑事をノーメイクで演じる。ソヒの足跡を辿り、理解するにつれて、職業上抑制していた感情が溢れ、短気で喧嘩っ早かったソヒのように教頭や上官に殴りかかってしまう。
踊っていたのは全州生物科学高校3年生のソヒ(キム・シウン)。担任の勧めで大手IT企業の子会社のコールセンターのインターンシップに参加する。有給ではあるが過酷な職場で、彼女たちのミッションは高額な継続特典の提示によって契約解除を回避すること。長時間労働、達成ノルマとインターン間の競争、クレーマー、会社にも学校に守ってもらえず、両親は無関心。それでもソヒはスキルを身に着け成果を上げるが、同時に心を擦り減らし、女性上司に反発して掴みかかり、謹慎中に冬の午後の貯水池で自ら命を絶つ。
遺体の収容にあたった刑事ユジン(ペ・ドゥナ)は、当初は単純な自殺案件として片付けようとしていたが、ソヒの死の背景に何か不穏なものを感じ、上官の許可を得ずに、会社、学校、家族、友人に会いに行く。
現代の日本にも置き換え可能な、身につまされる話です。ソヒの父親の職業は明確には描かれませんが、私大の学費を払える収入がないブルーカラーなのでしょう。大学進学を目指さない職業高校は、就業率だけで国から評価されて助成金が決まり、生徒たちが企業から搾取されていることに気づいていても何も言えない。大人たちは皆ちょっとずつダメだが、100%の悪人は登場しない。ちょっとずつのダメさが集積して主人公ソヒにしわ寄せが重くのしかかる。
前半90分は高校生ソヒが主役。多数の事実を丁寧に描写し、追い詰められていく姿にリリアリティを与える。後半50分の主人公は刑事ユジン。ペ・ドゥナの笑わない芝居。ルイ・ヴィトン、セリーヌなどハイメゾンのモデルにたびたび起用される美貌を封印し、母親の介護休暇明けのくたびれた中堅刑事をノーメイクで演じる。ソヒの足跡を辿り、理解するにつれて、職業上抑制していた感情が溢れ、短気で喧嘩っ早かったソヒのように教頭や上官に殴りかかってしまう。
音楽の使い方も特徴的です。全編生活音、環境音のみで、シンプルなピアノの劇伴が2シーンだけ流れる。実はダンススタジオで一度会っていたソヒとユジン。薄かったつながりがユジンの中で存在感を増し、強い西陽が二人を結びつけるところで象徴的に響きます。
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