「太古の昔、少女というものが存在したときから人形があった。人形は赤ん坊の姿をしていた。バービーがそのすべてを変えた」。20世紀初頭の装束の幼女たちがセルロイドのベイビードールを固い地面に叩きつけて破壊する衝撃的なオープニングは『2001年宇宙の旅』へのオマージュ。
バービーランドのドリームハウス、ハート型のベッドでバービー(マーゴット・ロビー)は目覚める。隣家のバービーたちに挨拶し、空の牛乳パックからマグに注ぎ、ホイップクリームを乗せたトーストを食べる。全てがピンクで彩られたバービーランド。大統領(イッサ・レイ)はアフリカ系バービー、最高裁判事(アナ・クルーズ・ケイン)も物理学者(エマ・マッキー)もノーベル文学賞受賞作家(アレクサンドラ・シップ)もバービーと名付けられている。
毎週開かれるガールズパーティでバービーは突然、死について考える。太ももにはセルライト。いつもハイヒールの角度に上がっていた踵が地面につく。「私は定番型バービー(Stereotypical Barbie)、深く考えるタイプじゃないの」。人形の持ち主の悩みや悲嘆を反映しているそれらを解決するためにバービーランドを出て現実世界に向かう。
ガーウィグ監督は『レディ・バード』『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』で描いたガールズエンパワーメントを推し進め、更にその先の在るべき世界について問題提起しています。女性主体のバービーランドで抑圧されているケン(ライアン・ゴズリング)は、現実世界の女性の生きづらさを反映しており、現実世界の男性優位を知ってバービーランドに持ち込もうとする。一度は洗脳されかけるが、かつての持ち主グロリア(アメリカ・フェレーラ)の熱弁で覚醒し、主体性を取り戻すバービーたち。
「男社会もバービーを作ったのも過酷な現実を乗り切るためなの」と言うバービー考案者ルース・ハンドラー(リー・パールマン)との対話により進むべき道を見つけるバービー。ホワイトバックは魂の交感を暗示しているように思えました。
LIZZOに始まり、群舞シーンのDUA LIPA、上述のルースとバービーのシーンに流れるBILLIE EILISH、エンドロールのNicki Minaj & ICE SPICEと2023年の音楽シーンを映した選曲がいい。グロリアとバービーの重要な対話シーンで無音になるのも逆に超効果的。サントラ盤の最後に収録されているFIFTY FIFTYの "Barbie Dreams feat. Kaliii" が劇場では流れません。アジア向けプロモーション用のイメージソングなのかな。定番バービー感全開で最高なのに。そこだけが残念です。
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