2022年4月3日日曜日

やがて海へと届く

春の雨。ユナイテッドシネマ豊洲にて中川龍太郎監督作品『やがて海へと届く』を観ました。

2016年の東京。レインボーブリッジが見えるレストラン ブライトコーストのフロアチーフ湖谷真奈(岸井ゆきの)は勤務中、自身でも気づかぬうちに涙を流している。

5年前に北へ旅立ったまま行方不明になった親友のすみれ(浜辺美波)との出会いは2005年春、大学の新勧だった。内気な真奈と社交的な美少女すみれ、初対面の先輩に「お人形みたい」と言われ「よく言われます」と返す強さも持つ。

雨の夜、家出したすみれは一人暮らしの真奈の部屋で1年余り過ごす。「歩くの好き/迷うのも好き」「私たちには世界の片面しか見えてないと思うんだよね」。真奈の部屋でも旅先でも教室でも、すみれはいつもビデオカメラを回している。レンズ越しじゃないと会話できないんだろ、と恋人の遠野(杉野遥亮)に見抜かれたことを裏付けるように、最後の一人旅にはカメラを持っていかなかったことで、真奈の手元に記録が残される。

「帰らないと/電車は来ないよ/歩いて帰りな/振り向かないように/立ち止まらないように」。上映開始1時間後に示されるキーワードによって、冒頭とエンディングに繰り返されるWIT STUDIO制作のアニメーションの意味が全く違って見えます。

アニメーション以外にも、陸前高田市民のインタビュー、早朝の海辺での歌唱、すみれ視点による物語の再生と、構成要素を盛り込み過ぎて、焦点がぼやけた印象がありますが、浜辺美波の泣きぼくろ、ビデオカメラの小さなディスプレイに映る岸井ゆきのの微細な目線の揺れなど、スマートフォンの画面サイズではわからない細部は映画館の大きなスクリーンで観る意味がある。

学生時代のすみれはいつもワンピースを着ていて、はじめて真奈と海に行ったときに着ていた水色のワンピースは本当によく似合っている。半袖から覗く二の腕が意外にぷにぷにしているのも好感が持てます。ぶっきらぼうなシェフ国木田を演じた中崎敏もよかったです。

 

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