冬晴れ。ユナイテッドシネマ豊洲でクリント・イーストウッド監督作品『リチャード・ジュエル』を観ました。
1986年、アメリカ合衆国ジョージア州アトランタ。中小企業庁の備品係23歳のリチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)は、法執行官を目指す正義感の強い堅物だが妙に気が利くところがある。弁護士ブライアント(サム・ロックウェル)の好物であるスニッカーズを絶妙なタイミングで補充し、信頼関係を築いていた。
いくつか職を変えたジュエルは10年後の1996年、AT&T社が受託したアトランタオリンピック記念公園の野外ライブの警備員になった。ケニー・ロジャースのあと、当時大流行していたマカレナ、そしてジャック・マック&ザ・ハート・アタックの演奏中に爆弾事件が起きた。死者2名、怪我人100名以上を出したが、不審物を発見し観客を避難させたことで被害が最小限に食い止められたため、ジュエルは一躍英雄扱いされる。
犯人像のプロファイリングと前職の上司の証言により、FBIはジュエルを容疑者のひとりとして秘密裏に捜査を進めていたが、枕営業により捜査官ショウ(ジョン・ハム)が特ダネ記者キャシー・スクラッグス(オリビア・ワイルド)にリークしてしまい、一転ジュエルはマスメディアに追われる立場になってしまった。
母ボビ(キャシー・ベイツ)と弁護士ブライアントとジュエルの3人ががっちりと組み、無実を勝ち取るまでの88日間の実話に基づきます。デブでマザコンで愛国的で銃砲を愛好するホワイトトラッシュ(日本的に言うとワーキングプア)の主人公は、リベラルな知識層から見たら怪しいの一言。その先入観と視聴率ありきのメディアの暴力に対してイーストウッド監督は一石を投じています。
研ぎ澄まされた脚本、重厚な演出、俳優陣もみな気持ちの入った熱演をしています。なかでもイケイケのゴシップハンターが真実に気づき改心する様を視線と表情で演じたオリビア・ワイルドは上手いなあ、と思いました。
監督自身ジャズを好み、作曲や演奏をたしなむそうですが、本作のアルトゥーロ・サンドヴァルのスコアは緊迫感がありながら出過ぎず埋もれすぎず『グラン・トリノ』や『ジャージー・ボーイズ』に比肩する素晴らしさです。
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