寒さが緩んだ曇天の日曜日。角川シネマ有楽町で、マックス・ミンゲラ監督作品『ティーンスピリット』を鑑賞しました。
2018年、英国ワイト島。酪農を営むポーランド系移民の娘ヴァイオレット・ヴァレンスキ(エル・ファニング)は17歳。高校に通いながら家業を手伝い、夜と週末はウェイトレスのアルバイト。母マーラ(アグニェシュカ・グロホウスカ)に聖歌隊以外で歌うことを禁じられていたが、酔っ払った老人がピアノ伴奏でダニーボーイを歌うようなパブで時々こっそり歌い家計の助けにしていた。
そんな場末のパブで彼女に声をかけた老酔客ヴラド(ズラッコ・ブリッチ)は、実はクロアチア出身の元有名オペラ歌手ヴラジーミル・ヴラコヴィッチ。ふたりは二人三脚で全国的なオーディション番組 UK TEEN SPIRITの頂点を目指す。
スクールカーストの下層にいて、ロンドンの本戦に向かうときも左手の甲にはバイトのメモがびっしり。ありがちなシンデレラ・ストーリーで主人公の葛藤も薄口ですが、エル・ファニングがスクリーンに投影されると、その画力の強さですべて帳消しにしてしまう。テンションが炸裂する決勝の歌唱シーンにはぞくぞくしました。
一方、山羊の乳搾りをしたり、馬の世話をしたり、草原で寝転んだりするヴァイオレットも美しい自然光で撮影されており、どっちが幸せなんだろうな、と考えてしまいました。英国の経済格差を描いた点は先週観た『家族を想うとき』と共通しますが、ケン・ローチ作品の直後だけに、本作のブレークスルーはファンタジーに見えます。
鮮やかな色彩、ドライヴ感溢れるカット割り、ブリブリの重低音を強調した音響設計はめちゃ格好良く、いまの十代に受け入れられると思いました。
0 件のコメント:
コメントを投稿