2023年11月4日土曜日

魔法歌劇アルマギア Episode.0

11月の夏日。北千住シアター1010にて松多壱岱ILCA)脚本演出の舞台『魔法歌劇アルマギア Episode.0』を鑑賞しました。

平和を愛する国イクタルの王女が亡くなり、ティア太田奈緒)とミア高井千帆)の姉妹が新たなディーバとマーギアーに選ばれ王家に迎え入れられた。マーギアーとはディーバの歌声によって覚醒し比類なき戦闘力を得る少女のことだ。

気弱な妹ミアは戦いたくないと言い実戦訓練を嫌うが、姉妹の指導役ケラ・ジュリィ長谷川里桃)の「誰かを傷つけるんじゃなく誰かを守るために闘う。誰かを守るための力、それは優しさ」という言葉に心を動かされる。

隣接するオリジアース帝国は「永久の平和を作るための戦いだ」と主張して、ディーバとマーギアーを軍事目的で育成し、領土を拡大しており、イクタルが次の標的となった。

いわゆる2.5次元ミュージカルを初めて観て、よくできているな、と思いました。この作品は役者もダンサーも全員が女性。芝居、歌、ダンス、殺陣、音響、照明、プロジェクションマッピングと沢山の要素を詰め込んで、娯楽であることに迷いがない。

6人のディーバの中では元こぶしファクトリー浜浦彩乃さん演じるアカネ・パークライドが出演時間は短いものの存在感が光っていました。ひとりだけバディを組むマーギアーを持たず且つ人工的に作られたディーバゆえの孤高の歌声。帝国軍から離反しイクタルに合流するラミノーズ役の反田葉月さんの芯の通った低音も素敵でした。

5人のマーギアーではミア・イクタルの葛藤と成長を演じた高井千帆さん(画像)が素晴らしかったです。歌唱パートの多いディーバと殺陣で活躍するマーギアー。ディーバの歌声をバックグラウンドにしてマーギアーのアクションが展開する。その意味でこの舞台の主役はミアであり、姉ティアはその成長を見守る役に僕には見えました。

冒頭引用した台詞の「大切な家族や故郷を守るための闘い」「戦争を終結させ平和を取り戻すためのマッシブな攻撃」というコンセプトは、そのために失われるひとつひとつの命を思うと、現実社会においてはどうしても同意できない部分があり、あくまでもファンタジー世界の中に留まっていてほしい。闘いを競技として頂点を目指すククル・マイド星守紗凪)や敵兵を倒す快感を知ってゾーンに入るマーブル・ハチェット小山璃奈)のほうがむしろ清々しいです。

 

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