2023年11月3日金曜日

人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした

11月の夏日。TOHOシネマズ錦糸町オリナス穐山茉由監督作品『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』を観ました。

28歳の青木安希子(深川麻衣)は元アイドル。グループを卒業後は広告代理店に勤めている。出勤中の最寄り駅前でマンホールの蓋にヒールが刺さり転倒、過呼吸を起こした。朝起きられなくなって3か月が経ち、会社を退職する。

高級マンションの前で自撮りしてSNSにアップしていたが、実際は家賃5万円の風呂なしアパート住まい。1本1,000円のウェブ記事は書いていても、貯金残高は10万円。

「寂しいとか寂しくないとかじゃなくて、一人でいると自分のことがわからなくなるじゃん」。心配した高校からの親友で会社経営者のヒカリ(松浦りょう)に紹介されたのは56歳の会社員ササポン(井浦新)とのルームシェアだった。月3万円の部屋代に惹かれ戸建の自宅を訪ねた安希子をササポンは「まあ、適当に」と迎え入れる。

「止まっちゃいけない。走り続けないと自分をディスる自分の声に追いつかれてしまう」、「私は寂しいという妖怪に憑りつかれて奇行を繰り返している気がします」。元SDN48第2期生大木亜希子がウェブメディアDybe!に連載したコラム「赤の他人のおっさんと住む選択をした」を書籍化した原作を元乃木坂46深川麻衣が演じる。自身の承認欲求に振り回され息苦しさを感じている世代の焦燥感やドロップアウトに対する恐怖感、それをある程度受け入れ客観視することで人生を取り戻す過程を描くコメディ映画です。

非常に淡々とした日常を適度な丁寧さで描き、ふたりの主人公の関係性を過剰にハートフルにしない演出に好感が持てます。「まあ、誰でもひとつぐらい才能ってあるんじゃないの」というササポンの安希子に対する距離感が心地よいです。安希子の29歳の誕生日に同級生3人が深夜の橋上で「幸せになりたい!」と叫ぶシーンがいい。深川麻衣のほくろがいい。ドタキャンした有名雑誌編集長を「少しだけ呪われろ」と言う安希子の三白眼がいい。ササポンの過去の傷が意外と普通なのもいい。正直あまり期待せず時間潰しのつもりで映画館に入ったのですが、観てよかったです。

 

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