2023年9月9日土曜日

エチオピーク 音楽探求の旅

台風一過。角川シネマ有楽町 "Peter Barakan's Music Film Festival 2023" にてマチェイ・ボシュニャク監督作品『エチオピーク 音楽探求の旅』を観ました。

2015年、フランス西部の町ポワティエ。湖畔の自宅でフランシス・ファルセトは膨大なレコードと書籍のコレクションを撮影クルーに見せ、すべてエチオピアに関連するものだと言う。

1969年、エチオピアの首都アジスアベバ。アムハ・エシュテはエチオピア初のレコード店を開く。米軍基地のアルバイトで聴いたR&Bに魅了され、レコードを輸入して販売することを始め、やがて自国の音楽家たちのレコードを製作したいという熱が高まる。

当時ハイレ・セラシエ1世による帝政下のエチオピアのミュージシャンは全員が国や自治体、軍や警察などに雇われた公務員だったが、比較的自由に活動でき、独自の音楽性を育んでいたが、レコーディングやプレスの機材や技術は持たなかった。アムハ・エシュテは自身のレーベルを興し、情報省のスタジオで録音したテープをインドに送ってプレスし逆輸入した。それから1974年の軍事クーデターによる政権交代までエチオピアの大衆音楽の短い黄金時代が生まれた。

軍事政権により弾圧され、忘却されかけた音楽は20年後にフランスでフランシス・ファルセトにより再発見され、現時点で30枚のコンピレーションCDになっている。政治に翻弄された音楽家たちとそれを忘れさせまいとするひとりの外国人オタク(映画内の肩書はMusic Activist)をフィーチャーしたドキュメンタリーフィルムです。

過剰な情熱は時に周囲を困惑させる。しかしそのたったひとりの情熱が無形芸術を継承する。離れていった家族も画面で思いを吐露します。本編で流れる音楽は、米国のR&Bを楽器演奏の基盤にして、時折中近東やインドを想起させる哀愁の旋律をこぶしを利かせて歌う、真の意味でワールドミュージックと呼びたいもの。エルヴィス・コステロソニック・ユースフガジもスクリーンに登場します。

上映後にピーター・バラカン氏と映像人類学者の川瀬慈氏のトークショーがありました。欧州映画的に説明を飛ばしたところを補完して、且つ裏話満載の興味深い対談でした。


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