1958年、カナダ、トロント。15歳のロビー・ロバートソン(2023年8月9日没)はアメリカから来たロカビリー歌手ロニー・ホーキンスのライブに行き、バックハンドのザ・ホークスで同世代の少年リヴォン・ヘルムがドラムを叩いているのを聞いて衝撃を受ける。
「子供の頃からどんな話もおとぎ話には聞こえなかった」。ロビーの母親は北米先住民モホーク族。父親はユダヤ人のプロ賭博士だったが、ロビーの妊娠中に交通事故死していた。翌1959年、ストラトキャスターを売って旅費に替えたロビーは単身合衆国アーカンソー州に旅立ち、ザ・ホークスに加わる。
ボブ・ディランのバックバンドで全米全豪全欧をツアーし、エレクトリック化したサウンドに各地で激しいブーイングを受け疲労困憊する。NY州ウッドストックに古民家を買いレコーディングセッションを始めたとき、バンド名はまだ決まっていなかった。
"Music From Big Pink"(1968) から "The Last Waltz"(1976)まで。1970年代のアメリカを代表するロックバンドと現在では目されているザ・バンドをメインソングライターでギタリストのロビー・ロバートソンのインタビューを中心に構成したドキュメンタリー映画です。
僕がはじめてザ・バンドを聴いた解散の数年後はもちろん、1968年のデビュー当時においてもその音楽は古臭かった。"Electric Ladyland" も "Strange Days" も "Led Zeppelin" も同年にリリースされている。ザ・バンドは、存命中の18世紀時点で既に懐古的と言われながらも広く愛されたJ.S.バッハみたいなものなんだろうな、と当時は思っていました。本作の中でメルヴィルやスタインベックと比較されますがむしろ、バイオレンスと非英雄的な死をリアリズムの手法で描くことで、西部劇とアメリカを最定義したアメリカン・ニューシネマの革新性と呼応するものだったのだ、と大人になったいまならわかります。
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