2023年9月14日木曜日

わたしと、私と、ワタシと、

雷雨。新宿K's CinemaにてTHREE SHORT FILMS OMNIBUS『わたしと、私と、ワタシと、』を観ました。

1本目は松岡芳佳監督作品『ただの夏の日の話』(2021)。「仕事、飲み会、先輩の機嫌、友だち」の平凡な毎日を送る陽月(深川麻衣)は、昨日の服のままアルコールの残った頭で目覚める。窓の外は見慣れない森林。部屋には知らないおじさん(古舘寛治)がいる。旅館を出て駅に向かうが、脇道、寄り道でなかなか駅に辿り着かない。

2本目は大森歩監督作品『』(2018)。地方の美大に通うアミさん(古川琴音)は祖父(花王おさむ)と二人暮らし。将来への不安と苛立ち、商業デザインと自身の志向のギャップ、進む祖父の認知症。約30分の上映時間で春夏秋冬を描き、次の春、アミさんは祖父とヘルパーさんに笑顔で敬礼して玄関を出る。

3本目は金川慎一郎監督作品『冬子の夏』(2023)。高校3年生の冬子(豊嶋花)は美術部員。担任やクラスメートの「高校最後の夏」というクリシェに同調できない。親友のノエル(長澤樹)が唯一の理解者だったが、ふたりで写生に出かけたひまわり畑で絵を描くことにも早々に飽きて、志向性の違いを痛感する。

3本の共通点は群馬県で撮影されていること。アラサー会社員、美大生、高校生が主役のストーリーは交差しないが、各世代なりの鬱屈と周囲との折り合いのつけ方が共通のテーマといえなくもないです。あと3人とも不機嫌な顔が板についている。

現在進境著しい古川琴音さんの5年前の初々しいお芝居が、演技している感じがなくて、ドキュメンタリー風の演出とあいまって途轍もなく瑞々しく、終始魅了されました。『冬子の夏』の終盤で撮影クルーが画角を占めるメタ演出は賛否ありそうですが、隊列にちんどん屋みたいな滑稽味があって、僕は面白いと思いました。音楽は、劇伴、エンドロールとも『ただの夏の日の話』がよかったです。

 

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