40歳のカティは同業への転職を試みるが上手くいかない。「魅惑の空間」という施設長ロレンゾ(フランソワ・クリュゼ)が盛りに盛った求人に応募した先は、査証を持たずに密入国した未成年男子移民に職業訓練を行う辺鄙な海辺の街の収容施設の料理人だった。
エチオピア、アルジェリア、バングラデシュ、ジョージアなど出身国も様々、各々の事情でフランスに来た少年たちは、18歳の誕生日までに進学か就職しなければ強制送還となる。前半40分はずっと不機嫌で頑なだったカティが、孤児である自らの境遇と重ね、彼らをチーム化し、調理と接客のプロフェッショナルとして育成することを決意したとき初めて笑顔を見せる。
移民、難民問題を扱う点では先日観た『トリとロキタ』と共通しますが、ダルデンヌ兄弟の徹底したリアリズムと比較して、コメディタッチの本作は基本サクセスストーリーではあるものの、すべて上手く収まりました、とならないところがフランス映画だな、と思います。
カティの旧友で女優志望のファトゥ(ファトゥ・キャバ)、施設の国語教師サビーヌ(シャンタル・ヌービル)、TV司会者ミカエル(ステファヌ・ブレル)のコメディ芝居に館内爆笑だったし、家族と離れ離れになっても素直で明るい10歳のギュスギュス(ヤニック・カロンボ)、料理の才能を発揮するママドゥ(アマドゥ・バー)、鬱屈したサッカー選手ジブリル(ママドゥ・コイタ)ら、本当の移民からキャスティングされた少年たちの自然な演技も素晴らしい。皮肉たっぷりなマスメディアの描かれ方も実にフランス的。
どの登場人物も嘘をつかず、他人とぶつかっても主張すべきことは主張し、一度約束したことは守る。鑑賞後の印象が爽やかなのはそういうところだな、と思います。97分のコンパクトな上映時間に収めるために、軽快なロックンロールで主人公を躍らせて端折るところは端折る。コメディ映画の定型を外さないのも好印象でした。
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