「ようこそ天間荘へ」老舗旅館の若女将で長女のぞみ(大島優子)のアップで映画が始まる。そこに入ってくる次女かなえ(門脇麦)との会話から、初対面の異母妹小川たまえ(のん)を迎えるために鏡に向かって笑顔の練習をしていることがわかる。タクシーの助手席にはガイド役のイズコ(柴咲コウ)。飲酒運転のトラックに轢かれて臨死状態のたまえの魂が現世と彼岸のモラトリアムである三ツ瀬町を訪れる冒頭部分には引き込まれます。真面目で慎重な長女、自由奔放な次女、天真爛漫な三女という人物造形も基本を外していない。
天間荘の長期滞在客である財前様(三田佳子)と若くして自死未遂した優那(山谷花純)の担当仲居となることを大女将天間恵子(寺島しのぶ)に命じられたたまえが、かたくなだったふたりの心をほぐし生きる決断をさせる。ここまでが90分。続く45分が三ツ瀬町民たちの鎮魂。最後15分が現世のたまえと優那の物語です。
150分という長い上映時間に比して、主要登場人物たちが衝突から和解に至る過程が性急過ぎる。このキャストならもっと表情で語らせることができたはず。ファンタジー世界を構築するうえでは世界観が必要だが、現世と三ツ瀬を往来する行程が、タクシー、漁船、人魂、門と一貫していないのは原作漫画通りだったとしても映画的文脈においては痛い。走馬灯のCGも不要。
のぞみ、かなえ、たまえの名前は欽どこのわらべなのかな。三姉妹はいいお芝居をしています。柴咲コウの死神もはまり役。のんの扱いに『あまちゃん』オマージュが多々感じられたのはよかった。旧三ツ瀬水族館は天然の入り江でイルカを飼育している下田海中水族館、改装後のシーンは八景島シーパラダイスですね。
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