1979年、米国西海岸LAのヴィンス・ロンバルディ高校に赴任したトーガー校長(メアリー・ウォロノフ)はロックンロールは有害だと考えており、女子生徒リフ・ランデル(P・J・ソールズ)が校内放送でザ・ラモーンズのレコードを爆音でかけ全校生徒が馬鹿騒ぎしているのを見て、オーディオケーブルを切断し、罪をかぶった親友ケイト・ランボー(デイ・ヤング)とともに反省室へ呼び出す。
リフはジョーイ・ラモーンが大好き。自分で作詞作曲した "Rock 'n' Roll High School" をツアーでやって来るラモーンズにどうしても渡したい。これがメインプロット。理系メガネ女子(メガネをはずすと実は美少女)のケイトはアメフト部主将トム・ロバーツ(ヴィンセント・ヴァン・パタン)に恋しているが、いつも天気の話しかしない童貞のトムは親友リフのことが好きで、ケイトはなんとか自分に振り向かせたい、というサブストーリー。ですが、全編通じてスラップスティックで、B級映画王ロジャー・コーマンとその弟子筋の悪ノリにラモーンズのやかましくてアホっぽい楽曲とパフォーマンスが重なり、極限まで誇張されたハイスクールシチュエーションコメディに仕上がっています。
ラモーンズのロックンロールが実験用マウスに与える悪影響を実証する際にトーガー校長が操作するフェーダーの目盛りが、一番下にパット・ブーン、上位はテッド・ニュージェント、レッド・ツェッペリン、ローリング・ストーンズ、ザ・フー、と並び、最上位にラモーンズ。炎上する高校を背景にしたケイトとトムのドラマチックなキスシーンは『風と共に去りぬ』のパロディでしょう。
1979年のラモーンズは、ジョーイ・ラモーン(vo)、ジョニー・ラモーン(G)、ディー・ディー・ラモーン(b)、マーキー・ラモーン(Dr)のベストメンバー。本人役で登場し、ライブシーンでは、電撃ビバップ、ティーンエイジ・ロボトミー、カリフォルニア・サン、ピンヘッド(GABBA GABBA HEY!)、シーズ・ジ・ワンを演奏。マーキー以外の3人は既にお亡くなりになられています。
ライブシーンの他に、ジョニー・ラモーンのアコースティック・ギターと(モズライトではなく)リッケンバッカー12弦をフィーチャーしたミディアムバラード "I Want You Around" や The Beach Boys の "Do You Wanna Dance" のカバーなど、思いがけずラモーンズの音楽性の幅広さに気づかされました。
ラモーンズ以外に、アリス・クーパー、MC5、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、トッド・ラングレン、DEVO、ニック・ロウなんかもかかります。劇伴にBent Fabric、不意打ちのようにブライアン・イーノが何度か聴こえて都度びっくり。
ラモーンズといえば現在ではNYパンクロックの代名詞的存在ですが、劇中ではパンクとは呼ばれずあくまでもロックンロールバンドとして扱われており、当時の感覚としてはそうだったのかもしれません。登場人物の台詞に "Punk" が使われるのおそらく1回だけ。校舎を占拠したリフに向かってトーガー校長がメガホンで「ならず者!」と罵倒する場面のみだと思います。
ラモーンズのTシャツ割引もあるので、持っている方は是非新宿へ!