舞台は現代の韓国釜山。滝のような雨水が流れる急な石段を登ってソヨン(イ・ジウン)は、坂道の上の教会に設置されたベイビー・ボックス(日本でいう赤ちゃんポスト)に我が子ウソンを捨てに行く。それを覆面パトカーから見ていた女性警官スジン(ペ・ドゥナ)は「捨てるなら産むなよ」と吐き捨て、玄関の床に置かれた赤子をボックス内の籐かごに移す。教会の職員ドンス(カン・ドンウォン)は違法ベイビー・ブローカー。クリーニング店主サンヒョン(ソン・ガンホ)と組んで、捨て子を里親に紹介し、仲介料を得ている。
翌日後悔したソヨンが戻ってくる。ギャンブルで作った借金返済のため金が必要なサンヒョンは、いい里親に育てられたほうが子どもは幸せだ、とソヨンを説得し、ドンスと3人で里親探しの旅に出る。人身売買の現行犯逮捕を狙うスジンと後輩警官イ(イ・ジュヨン)は、4人が乗ったクリーニング店のワゴンを尾行する。
上記6名と途中から合流する児童養護施設在住のサッカー少年ヘジン(イム・スンス)の7名が主なキャスト。異なるバックグラウンドと異なる事情で小児売買に関わる旅の過程でそれぞれの生き方が魅力的に描かれ、各々の不完全さが愛おしくなるロードムービーです。
実は自身も児童養護施設出身のドンスが、ソヨンとふたりきりの観覧車の密室で、自分を捨てた実母に対する本音を吐露する。「許さなくていい」と言うソヨン、「代わりに君を許す」と答えるドンス。たがいに優しくあろうとする姿が切ない。ひとつの失敗をもって社会から完全に消し去ろうとする、あるいは消えたいと願う、昨今の風潮に対する問題提起と捉えました。
ばらばらの目的を持って並行する線を最後にひとつのメッセージに収束させ、且つ問いかける監督の剛腕。子役の自然な演技の引き出し方はさすが。監督以外は基本的に韓国のキャストとスタッフです。ピアノといくつかの弦楽器を使用したチョン・ジェイルの音楽が素晴らしい。
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