はじめてひとりでステージに立った4月11日に毎年行われるアニバーサリーライブへ僕がはじめてお邪魔したのは2013年。それから毎年楽しみにしてきたのですが、昨年は緊急事態宣言発令直後でオンライン配信になりました。
ひとひねりあるソングライティング、直線的に澄んだ歌声、タイトでスキルフルな演奏で紡がれる音楽は確信に満ちているのに、曲間のmueさんはいつも控えめ。「大丈夫ですか?」と何度も客席に問いかけ、「20年がまとまらない」と逡巡する。その姿を見て「大丈夫、まとめなくても、散らかったままでも」と思う僕ら。そこにゆるやかな連帯が生まれるマジック。
そもそも表現におけるフレッシュネスの重要な構成要素は迷いや逡巡なのではないかと気づかされました。
コロナ禍のステイホーム中に書かれた新しい2曲は、ベースの8ビートとピアノのドローン(通奏低音)循環によるあえて展開を控えたシンプルな構成になっており、音楽を止めるなという明快なメッセージに決意を滲ませる。ジョン・レノンとケニー・ランキン、曲調も歌詞も対照的なふたつのカバー曲の解釈もチャーミング。
今回のライブのタイトルになっている『大きなひとつの丸の中で、行ったり来たり。』。mueさんが「丸の中を、」よりも「丸の中で、」を(おそらく無意識に)選択したのは、とどまりながらも動き続ける自由意思を後者のほうがより確かに感じられるからではないでしょうか。
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