2020年2月23日日曜日

THE NORTH WOODS

春一番の翌日。六本木ミッドタウン富士フイルムフォトサロン東京で開催中の大竹英洋写真展『THE NORTH WOODS ノースウッズ ― 生命を与える大地』を鑑賞しました。

写真家大竹英洋さんとの出会いは古く、2002年頃。当時原宿明治通りのセレクトショップの従業員サロンで隔月開催されていたBOOKWORMです。その頃既に北米の森で写真を撮っていた大竹さんの物静かな語り口と過酷な野外撮影の話のギャップが深く記憶に刻まれていました。

先月のBOOKWORMでカズエさんからこの個展のことを聞き、十数年ぶりに会いに行きました。

大きな作品は長辺2メートルを超えようかというサイズのオリジナルプリントはネットや印刷物とは異なる感動がありました。アメリカ北部からカナダ、北極圏近くまで広がる広大な森林。野生動物たち。凍てつく冬景色。春の訪れを告げる可憐な花々。先住民アニシナベの暮らし。細部まで正確に合わされたフォーカスに大竹さんの几帳面な性格が表れ、被写体を見つめる眼差しは優しく、且つ適切な客観性を持つ。

写真とは現実世界にフレームを当てて切り取るもの。鑑賞する我々が写真家の提示するフレームに共鳴するとき、プリントされた画面を超えて五感が拡張し、写真家が現実に観た世界を体感する。暖房の効いたギャラリーにいながら、極寒の大地に僕は立っていました。

特に印象に残ったのは、レッド・パイン(アカマツ)の樹皮のレンが色と幼いオジロジカが目を閉じて新芽の生えた地面に伏せている写真です。「じっと気配を消すフリーズという行動で、オオカミの棲む森で生き延びるためのの本能だ」というキャプションを読み、以前BOOKWORMで大竹さんから聞いた、森の中で何日も身じろぎせずムース(ヘラジカ)を待つ話を思い出しました。

その話をしたところ「いまでは鳴き真似でヘラジカを呼べるようになりました」と笑う大竹さん。フィジカル的にもメンタル的にもハードに違いない現場をいくつも乗り越えて、初対面の20代の繊細さを保ちながらも数段タフになった姿がまぶしかったです。

 

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