山手線の座席の背中に注ぐ春の日差しがまどろみを誘う。駒込駅からアザレア通り商店街を抜けて2本裏通りにある昭和モルタル建築のヴィンテージ集合住宅マルイケハウス。急な外階段を上って突き当りがちょこっとカフェギャラリーmaruchanです。
個人経営の小さなお店だからこそのアットホームで上質なイベントを組んでおり、昨年3月には青柳拓次さんのライブに行きました。
そこ不定期開催されているオープンマイク「朗読会@maruchan」。主催者でDJでもある松澤翼さん(画像)が去年の1月に続き再びゲスト出演のオファーをくださいました。
靴を脱いで上がるこじんまりとした部屋で、参加者ひとりひとりのマイクを通さない生の声に耳を澄ます静かで豊かな時間。お気に入りの詩集や小説の一節、絵本、多くを語ることはなくとも、声の響きから手にしたテクストに対する愛着が伝わってきます。
朗読というのは不思議な表現です。文字と声さえあれば誰でもできる。メソッドが確立している歌唱や演劇とは違い、技術や技巧が問われない。逆に技術や技巧を伴わないところに感動が生まれることが多い。
たとえばこの日、ご自身のライブの前に立ち寄ってくださったノラオンナさんはミュージシャン/シンガーとしては一流の技術を持つ方ですが、自作曲の歌詞の朗読は含羞に満ちた、敢えて言うならたどたどしいものでした。それでも声を通じて詞の対象への愛情が歌以上に直接届く。そういう意味では読み手を聴き手という立場を超えた、会話/対話に近い感覚なのかもしれません。
僕は2セット、計30分をいただき、前半は自作詩「Doors close soon after the melody ends」「International Klein Blue」「コインランドリー」「すべて」「新しい感情」の5篇を、後半はカバーで究極Q太郎「幾千もの日の記憶」、カオリンタウミ「Rumbling In The Rain」、宮澤賢治「告別」、Aztec Camera「We Could Send Letters」を朗読しました。
maruchanは店主の芳賀千尋さんが長い旅に出るため(いまはネパールにいらっしゃいます)、しばらく休業します。再開した折には是非またお邪魔したいと思っています。
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