春分の日は晴天。ユナイテッドシネマ豊洲で、山田洋次監督作品『家族はつらいよ』を鑑賞しました。
2013年の『東京家族』から、橋爪功と吉行和子の老夫婦と三人の子どもたち、西村雅彦、中島朋子、妻夫木聡、その配偶者・恋人に夏川結衣、林家こぶ平、蒼井優、という基本的な家族構成はそのままに、しかし設定を大きく変えて。渥美清のようなアウトサイダーこそ登場しませんが、タイトルどおりの喜劇映画です。
『スモーク』に対する『ブルー・イン・ザ・フェイス』みたいなもの、と言っても、ポール・オースターのファンにしか通じないか(笑)。
むしろそのウェルメイドな感触はウディ・アレン。ただし小洒落たところはありません。「お茶」と言えばお茶が出てくる、「タバコ」と言えばタバコが差し出される。既にノスタルジーの中にしか存在しない古き良き頑固おやじ像。この映画がヒットしているのは、中心的な観客層である60~70代がそのような保守的な家族観に対する憧れをどこかで捨てきれないからなのだと思います。
夫婦は常に対立し、感情がすれ違い、時にいさかいが生まれる。それが笑いを生むのですが、一方でその連鎖に疲れたところに、妻夫木聡と蒼井優がフレッシュな空気を吹き込む。このへんのバランス感覚も実に計算されています。
市民会館の警備員役の笹野高史が僕的にはベストアクト。出演時間は短いですが、フィジカル面においてもスラップスティックを見事に演じており、コメディセンスとは真に選ばれし者のみに与えられる恩寵なのだなあ、と思いました。
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