テキスタイルとキルティングによって創られる実物大の家具や人体のオブジェ。大きなものは箪笥やソファ、小さなものは電灯スイッチやコンセントまで。それは既に誰かの生活から失われてしまっているが、記憶の中に保存されているもの。元の持ち主へのインタビューに基づいて製作されています。
実物大であるがゆえの生々しさと、キルティングというフィルターを通したときに付加される優しい感触とユーモアがあります。今回は初めて日本で展示するために、第二次世界大戦中の日系アメリカ人収容所に隔離されていた人たちにインタビューし、記憶を収集した。カメラであったりレンチであったり。
レセプションでは作家本人の挨拶と作品の簡単な解説に続き、村田活彦さんが自作の詩を朗読しました。村田さんは喪失した関係性を記憶に留めておくために書いたという詩を、また今夜がペルセウス座流星群の極大ということで「何か書いてきて」とお願いしたら新作を間に合わせて来てくれました。
小林うてなさんは小さくて底抜けに明るくてチャーミングな方。蓮沼執太フィルをはじめ多くのプロジェクトに参加しているミュージシャンです。ソロ演奏はブリストル系っぽい重低音の変拍子ブレイクビーツにせせらぎにようなスチールパンとエンジェリックなヴォイスが重なる耽美的なミニプログレ(自己申告ベース)。ボッチンさんのファー星人(着ぐるみ)ダンスも加わり一気にお祭りに。
僕は、伊藤比呂美「アウシュビッツ ミーハー」、石原吉郎「葬式列車」、山城正雄「たそがれ――M嬢に捧げて」の3篇をカバー朗読しました。第二次世界大戦中および戦後のアウシュビッツ、シベリア、カリフォリニアの強制収容所にまつわる作品です。展示の趣旨のひとつを掘り下げ、複数の異なる視点を提示したいと思い選びました。
記憶を作品化して固定すること、居住地域や生活スタイルが国家により制約を受けること、差別や非人道的労働について、考える機会を得ました。客席の皆様にもそんな何かを手渡せていたらいいなと思います。ケイさん、村田さん、うてなさん、オーガナイザーの増田奈保子さん、ギャラリーセプチマさん、ありがとうございました。
レセプションは終わりましたが、展示は8月19日(水)まで続きます。中央線ユーザーの方、モノレール好きな皆様、是非会場に足をお運びください。
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