シネ・ロック・フェスティバル2015。2本目は『バイオフィリア・ライブ』。2013年のロンドン公演をニック・フェントンとピーター・ストリックランドが撮っている。ビョークという名の世界一かわいい生き物(当社比)。その固有種が飛んだり跳ねたり歌ったりする姿を愛でるためのフィルムです。
360度の円形ステージには20数名の女声聖歌隊(Icelandic Female Choir)。楽器演奏者はマット・ロバートソン(key)とマヌ・デラーゴ(dr/per)のふたりだけ。暴力的なアナログシンセ音に巨大なテスラ放電管がシンクロする。ビョークの音楽の独自性、革新性について僕があらためて言うまでもないのですが、ライブフィルムを通して感じたのは、もしかしたら自己の快感原則に従って普通のポップソングを作っているだけなのかもしれないな、ということ。ネリー・フーパーからmatmosまで、常に最先端のミュージシャンと共同制作していること、楽曲にキャッチーなサビがないことなどから前衛的に思われがちですが、おそらく彼女は最先端や前衛なんてこれっぽっちも意識していない。
なのにラスト近く、唯一のタテノリ曲 "Declare Independence" でホールを煽りまくっても、そのハードコアなビートに観客の半分も乗れないでいる。そのギャップ、異物感こそがビョークの音楽なのだと思います。
頭上の複数のモニターに投影されるグラフィックや微生物、クラゲ、星雲などが時折ライブシーンを覆い尽くす。"Hidden place"のヒトデやイソギンチャク、 "Possibly Maybe" のイカを喰い尽くす小魚の群なんかは美しいのですが、それよりも、へんてこなハンドメイド楽器たち、ガムランとスチールパンの中間みたいなやつ、木製の自動演奏パイプオルガン、一戸建サイズの手廻しオルゴール的な何かなどなど、できればもっとアップで見たかったな。
洋楽のライブの敷居がまだ高かったローティーンの頃、飯田橋や池袋の名画座で『レッド・ツェッペリン狂熱のライブ』や『トミー』や『ウッドストック』、ピンク・フロイドの『ザ・ウォール』なんかを2本立で5時間も6時間も観たのを思い出して甘酸っぱい気持ちになりました。
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