朝は曇っていた東京にも午後からすこし日が差してきました。そんな三連休の中日。日比谷TOHOシネマズ シャンテで『恋のロンドン狂騒曲』を鑑賞しました。ウディ・アレン監督作品は半年前に『ミッドナイト・イン・パリ』が公開されたばかりですが、本国アメリカでは『恋のロンドン狂騒曲』が先に公開されています。
「人生は単なる空騒ぎ。意味など何ひとつない」という台詞を引用して始まるこの映画。シェイクスピアの『マクベス』を一応下敷きにしているらしいのですが、まったく原型をとどめていません。
ロンドン市内を舞台に、アンソニー・ホプキンスとジェマ・ジョーンズの英国人夫妻、その娘ナオミ・ワッツと夫ジョシュ・ブローリンという二組のカップルを軸に、周囲を巻き込んで、惚れたの腫れたの、くっついたり別れたりするコメディです。
ウディ・アレンの映画はいつも、アッパーミドルクラスのしょうもなさを皮肉と愛情を込めて描いています。自分の老いを受け入れられないアンソニー・ホプキンスは、いつもラルフ・ローレンのオフホワイトのセーターを粋に着こなしている。離縁された妻ジェマ・ジョーンズはニュー・サイエンスというか、スピリチュアリズムに嵌る。このふたりが映画の他の登場人物たちをイラッとさせまくる。その姿に映画館が爆笑するという。
『ミッドナイト・イン・パリ』のような荒唐無稽さや、『ブロードウェーと銃弾』みたいな事件は起きないけれども、テンポのいい編集と熟練の演技で魅せる上質な大人の台詞劇といっていいんじゃないでしょうか。
この映画のいちばん良いところは上映時間。98分。これ以上でも以下でも成り立たない。物足りなさと腹八分目のぎりぎりのバランス。ウディ・アレンのほかの映画にも言えることですが、このやや短めの上映時間が、映画そのものの品の良さにつながっていることは間違いないです。二本立てとか、いろいろな要因があるにせよ、日本のかつての喜劇映画の傑作にも90分前後の作品が多かったのは偶然ではないと思います。
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