市川実日子演じる主人公は、幼いころから猫(だけ)に好かれるタイプ。祖母を2年前に亡くしてから、木造一戸建にひとりで暮らし、「レンターネコ、ネコネコ。さびしい人に猫貸します」と、多摩川土手で猫6匹を乗せたリアカーを引いて行商しています。
そこで出会う4人のクライアントとの物語。4人それぞれの心に開いた穴を、ゼリーにスプーンで開けた穴、靴下の爪先に開いた穴、ドーナツの穴、蟻の巣穴に象徴させて、丁寧に、且つ適度にユルく描いたファンタジーです。猫の貸出しには審査が必要で、前金は1,000円。
クライアントたちは猫と暮らすことによって、一時の充足を得ますが、実生活はやはりうまくいかないことのほうが多い。結局人の心の穴を埋めることができるのは、人か、人が作りだした芸術作品(この映画も含む)しかないのかな、とシニカルなことを考えてしまいました。
隣家の嫌味な主婦を演じた女装の小林克也が最後の最後にほろっとさせます。この映画で山田真歩さんのお芝居を初めて観ましたが、知的で、隙だらけで、チャーミングで、役者としてのポテンシャルを強く感じました。期待大。
市川実日子は派手な色のへんてこな衣装を次々と格好良く着こなし、さすがは元OLIVE専属モデル(当時吉川ひなのの後継)。市井の女子が真似ると怪我するので、やめたほうがいいと思います。それから田中圭くんの顔がやっぱり好きだなあ、と。
画面に登場する猫たちは、みな自由で、立場をわきまえ、自然体で、愛らしいです。猫好きの観客もきっと彼ら彼女らの姿に満足することでしょう。
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